イノベーティブ・スタートアップ 2020.06.17

ユーザー行動のデータを集めるスマートディスプレイのThe Peak Beyond

ECサイトの成長に伴い、実店舗の役割や価値について見直しが求められています。実際、2019年に全米では約1万の実店舗が閉鎖し、2020年2月には全米で1,000店舗を持つ大手家具小売のピア1インポーツがチャプター11(連邦倒産法第11章)の適用を申請し約500店舗を閉鎖しました。更にCOVID-19の影響で実店舗離れが益々加速していくと考えられます。

とはいえ実店舗が完全になくなることはなく、店舗側が新たなビジネスモデルを生み出すことで実店舗がまた成長できる可能性があります。今回はユーザー行動データの販売をビジネスとするスタートアップ、The Peak Beyondをご紹介します。

スマートショッピングディスプレイを提供しユーザー行動を分析

The Peak Beyondが提供するスマートディスプレイでは、商品説明やディスプレイ上でのユーザー行動が分析できるほか、POSとのインテグレーションを行ってその場で決済することもできます。ユーザーが商品をディスプレイの横に置くと、対象商品の情報がディスプレイに投映される仕組みで、商品がディスプレイに投映された回数・時間帯・閲覧ページ・操作時間・購買記録などユーザーの行動データがきめ細かく取得できるのが強みです。また提供しているディスプレイは3種類ありますが、1ディスプレイから活用できることから、スモールスタートで活用してみることも可能です。

ビジネスモデルはユーザー行動データの販売

ここで、そのビジネスモデルについて説明します。ここで関係するのは、実店舗、出展ブランド、ユーザーの3者です。

  • 実店舗
    ショッピングセンターやセレクトショップが店舗内にこのスマートディスプレイを設置し、そこで集めたユーザー行動データを出展希望ブランドへサブスクリプションモデルで提供。
  • 出展ブランド
    自社製品を手に取ったユーザーの行動データを収集。例えば最新ガジェットの試作品などのテストマーケティングの場としてユーザー行動データを取りたい場合にも活用できます。初期費用は必要なく、必要な期間のみスマートディスプレイを活用してユーザー行動データを得ることも。
  • 実店舗を訪れる一般ユーザー
    一般ユーザーはスマートディスプレイを通じてより詳細な製品情報を知ることができます。

ショッピングディスプレイを活用した店舗イメージ
(The Peak Beyond ウェブサイトより転載)

 

ここで、日本で考えられるThe Peak Beyondの活用シーンを2つ紹介してみたいと思います。

携帯ショップ

日本の携帯ショップは新規契約・契約内容変更などの手続きを行う場所です。しかし、週末など人が混み合っており待ち時間が長く、ちょっとした手続きでも数時間かかってしまったたことはないでしょうか?

そこで、携帯ショップにThe Peak Beyondのスマートディスプレイを設置し、最新ガジェットなどを出展して触れてもらうようにすれば、つまらない待ち時間から楽しい待ち時間へと変えることができ、新たな顧客獲得または解約防止に繋がることが期待されます。またスマホに関連したガジェットを提供する出展ブランド側もテストマーケティングの場として活用できるといったメリットがあります。

D2C(Direct to Customer)ブランド

成長しているD2CブランドはECサイトの次に実店舗への出展を目指します。もちろん販売するという目的もありますが、ユーザーとの繋がりを高めるのに最も効果的な場所が実店舗だからです。店舗スペースを有効的に活用したいと考えている企業、新たな集客を課題としている店舗などはThe Peak Beyondのディスプレイを置くことで、実店舗への出店を希望しているD2Cブランドを誘致しやすくなり、収益を生む新たなスペースを作ることができるかもしれません。

NisshoUSA注目ポイント

The Peak Beyondが目指すビジネスモデルは2020年夏に日本に進出予定の体験型小売店を提供する「b8ta」とほぼ同じです。私が注目した点はb8taのようなビジネスモデルをディスプレイ1つから提供できるという点です。東京などの首都圏は米国とは違い、店舗のスペースが限られています。しかしThe Peak Beyondが提供するスマートショッピングディスプレイは1ディスプレイから提供できるといった点で日本の事情にマッチしていると感じました。実店舗の在り方が見直されている昨今、このスマートショッピングディスプレイを活用することで閉鎖が危惧されている店舗からマネタイズができる新たな店舗へと変えることができるかもしれません。

会社概要

設立年 2016年
所在地 カリフォルニア州サンフランシスコ
従業員 10名
創設者 Jeff LaPenna、John Capogna、Bill Stark
資金調達 $797K
VC CanopyBoulder
URL https://thepeakbeyond.com/

※crunchbaseデータベース参照

最後までお読みいただきありがとうございました。
弊社ではイノベーティブなビジネスモデルの創出を目指して、米国企業の取り組みや斬新なスタートアップ発掘を行っています。是非お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

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Shuichi Noto

2008年にユニアデックス入社。5年間の大手通信キャリア向けの営業を経験した後、日商エレクトロニクスへ入社。大手OTTの情報システム部門向けにVDIやWeb会議などの働き方改革を促進するソリューションの販売に従事。2019年よりNissho USAに赴任。お客様のビジネスを共創&サポートできるようなソリューションの発掘を目指し日々活動中。担当領域はITインフラ全般、ヘルスケア業界、地域創生など。趣味はゴルフとサッカー。

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