米国イノベーティブカンパニー 2020.07.11

週刊米国ユーザートレンド&注目ニュース~サービスプロバイダー①~

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7月第2週の週刊コンテンツはサービスプロバイダーをとりあげます。

1. Google のAIバルーンインターネッサービスプロジェクト「ルーン」が本格始動

Alphabet/Google傘下のLoonがAIを活用したバルーン(気球)による地上へのインターネットサービスの商用提供をケニアで開始した。現地のサービスプロバイダーであるTelkom Kenyaとの共同プロジェクトとして35基のバルーンを数週間で空中へ打ち上げ、Telkom Kenyaユーザへのサービスを進めていく。初期から5Gでというわけにはいかないが、4G/LTEベースでケニアの西部、中部の約5万平方キロメートルを空中からカバーする。インターネット速度テストでは、18.9Mbps(毎秒メガビット)のダウンロード速度と4.74Mbpsのアップロード速度が実証されている。Covid-19の影響でケニヤではストリーミングサービスやエンターテイメント等、インターネットサービス需要が増えているとのこと。デジタルデバイドの解消や災害対策にも大いにパワーを発揮しそう。また、AI技術により天候による影響を回避し、自立浮遊を実現しているところがおもしろい。Space XのStarlinkプロジェクトと比較し、どちらがこの空中争いを制するのか非常に楽しみだ。

https://www.cnbc.com/2020/07/08/alphabets-loon-starts-beaming-internet-from-balloons-in-kenya.html

2. スペースX 「Starlink」プロジェクトの競合である「OneWeb」が経営破綻から再建へ

スペースXとOneWebの衛星インターネットワークサービス競争はまだ決着がつかなそうだ。米ではイーロン・マスクのStarlinkプロジェクトが注目を集めているが、その陰で倒産に追いこまれたのがOneWebである。OneWebが倒産すれば、実質この競争を制するのはスペースXだと言われていた。そのOneWebが英政府とインドのBharti Globalによる買収を経て復活する。StarlinkもOneWebどちらも空中に多くの衛星を打ち上げ、そこから世界中にインターネットワークサービスを提供する。スペースXは既に500基以上、OneWebは74基と打ち上げ基数においても差があるのが現状だが、両社の競争は見ものである。OneWebは過去にソフトバンクからの出資を受け、日本でも注目された会社である。OneWeb再建計画の詳細は明らかになってはいないが、イーロンマスクは既に年末には北米とカナダにサービス提供を開始すると宣言しているため、再建のスピードが鍵を握りそうだ。是非注目したい。

https://www.cnbc.com/2020/07/10/onewebs-bankruptcy-rescue-changes-the-competition-for-elon-musks-spacex-starlink.html

3. AT&T、T-Mobile、Verizonがスタンドアロン5Gコアネットワーク立ち上げへ

米国では日々大手サービスプロバイダーであるAT&T、T-Mobile/Sprint、Verizonの間で5Gサービス競争が起こっている。正直我々が本格的に5G体験ができるのは結局いつなの?というくらい情報が入り乱れているが、5Gを支えるインフラへの投資はスピードアップしていきそうである。これまでは認証の観点や既存の環境を有効活用しながらスムーズに5Gに移行させるため、既存4G/LTEのインフラと共存しながらつくられていた。いわゆる非スタンドアロン型ということになるが、ようやく5G単独でのインフラ構築に各社が乗り出すことになる。エリクソンやノキア、ファーウェイやシスコがインフラベンダーとしては主力である。5G単独インフラが出来上がることにより、例えば我々ユーザの利用するアプリ単位で仮想的にネットワークを構築できたりとより細かな制御が可能になる。ユーザ体験としてはスムーズかつ不自由なくそのような体験が出来ればよいが、一方で5G単独インフラを構築することによるサービスプロバイダーのビジネスモデルがどのようになっていくのかは非常に興味がある。

https://www.lightreading.com/5g/atandt-t-mobile-verizon-prep-for-standalone-5g/d/d-id/762326

まとめ

大手サービスプロバイダーによる5G競争が盛んに行われる一方で、GoogleやスペースXなど、新規参入組によるサービス競争がどのようになっていくのかは非常に興味深いです。Covid-19の影響によるインターネットサービスへの各国の興味もあり、新興国のみならず、発展途上国へのインターネットサービスがどのように進化していくのか注目していきたい領域ですが、日本でも意外なところから本業界に参入する企業が出てこないのか期待したいところです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

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Nobuyuki Komatsu

2004年、日商エレクトロニクス入社。JuniperやBrocade、Viptelaなどネットワークを軸としたインフラ製品の事業推進や新規ベンダー立ち上げに関与。2017年10月よりサンノゼ赴任。シリコンバレーで得られる最新の情報を発信しつつ、新たなビジネスモデル開発に向け日々奮闘中。2020年現在の担当領域は、クラウドやフィンテック、インシュアテックなど。バスケットボールとキャンプが趣味。

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