新たなプログラミング手法として耳にするようになったノーコード開発。日本でもノーコードで開発された新たなサービスの誕生や買収などの事例が出てきていることから、テック業界だけではなく様々な業界で注目され始めています。
また今年に入り米国著名ベンチャーキャピタルのAccelがWebアプリをノーコードで作成するWebflowにシリーズBで投資したほか、Tiger Globalがモバイルアプリをノーコードで作成するAdaloにシリーズAで出資していることからも、今後さらに盛り上がっていくことが予想されます。
2012年に創業したBubbleや2013年に創業したWebflowは日本でも使われ始めており、2013年前後に誕生したスタートアップが現在勢いが増しています。その一方で、ここ数年で新たなノーコードスタートアップも次々と誕生しました。
今回は私が注目している2018年以降に設立された新たな可能性を秘めているノーコードスタートアップを3社ピックアップしお届けします。
機械学習モデルを自動で作成するIntersect labs
Intersect labsが提供するのはコーディングを必要としないで機会学習モデルを構築するプラットフォームです。過去のデータを学習してユーザーが求めるデータを算出するための最適な機械学習モデルを自動で構築することができます。
Intersect labsが提供しているデモでは、銀行で将来解約する可能性の高い顧客を予想するというケースを紹介しています。具体的な手順としては、まず銀行側で保有している年齢、残高、契約期間、実際に解約したユーザーなどのデータをIntersect labsで読み込ませます。次に現在の顧客データを読み込ませると、今後解約する可能性のある顧客を予想するだけでなく、その予想結果の信憑性についても表示します。
今回の例では解約する可能性がある顧客を予想するというものでしたが、コーディングや機械学習の知識がなくても予想したいデータを得ることができるという点では様々な場面で活用することができそうです。
設立年 | 2018年 |
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所在地 | サンディエゴ |
従業員 | N/A |
創設者 | Ankit Gordhandas(Co-Funder & CEO) |
資金調達 | $150K(約1650万円)シード |
VC | Y Conbinator |
URL | https://www.intersectlabs.io/ |
※crunchbaseデータベース参照
モバイルアプリに特化したノーコードツールを提供するFlutterFlow
FlutterFlowはモバイルアプリをノーコードで開発する機能を提供するスタートアップです。ユーザーはプログラミングコードを書く必要がなく、パワーポイントと似たような感覚で主にドラッグ&ドロップの操作でモバイルアプリを構築することができます。その裏で動いているのはFlutter(モバイルフレームワーク)、Firebase(モバイル&ウェブアプリのバックエンドサービス)、Algolia(検索APIサービス)、Codemagic(テスト・ビルド・配信の自動化ツール)です。特にFlutterによってiOSとAndroidの両方をカバーでき、各OS用にそれぞれサービスを構築する必要がないため、効率よいモバイルアプリの開発が期待できそうです。
その他特徴的なのはFlutterFlowで構築したアプリのコードをエクスポートできるという点です。多くのノーコードツールでは裏でどのようなコードが書かれているか非公開となっていますが、FlutterFlowでは公開されGitHubとの連携も可能となっています。
設立年 | 2020年 |
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所在地 | サンフランシスコ |
従業員 | 1-10名 |
創設者 | Abel Mengistu(Co-Funder), Alex Greaves(Co-Funder) |
資金調達 | $150K(約1650万円)シード |
VC | Y Conbinator、SB Opportunity Fund |
URL | https://flutterflow.io/ |
※crunchbaseデータベース参照
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社内の管理業務をノーコードで自動化するBryter
Bryterはコンプライアンス、法務、調達、人事、プライバシー、セキュリティなどの社内の管理業務の自動化をサポートするノーコードツールです。社内業務の自動化と聞けばRPA(Robotic Process Automation)を想像する人は多いかと思いますが、従来のRPAで自動化できるのはデータ入力などマニュアル化できるような決まりきった作業であり、人の判断が入るものは自動化できません。一方Bryterは人が判断する領域の一部もコーディングなしで自動化します。その実現方法は業務プロセスのワークフローを作成することで、今まで人が判断していた業務の一部を判断できる仕組みを作るというものです。
ヨーロッパではコンサルティング会社のPwCに所属する弁護士約100名がBryterを使用するトレーニングを受け、弁護士自ら業務に活かせるアプリを構築することでパフォーマンスの向上に繋がった事例も発表されています。このような事例から今後エンジニアでなくとも自らアプリを開発してビジネスに活かすという時代は、意外と早く訪れるのかもしれません。
設立年 | 2018年 |
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所在地 | ベルリン |
従業員 | 101-250名 |
創設者 | Michael Grupp(Funder & CEO) |
資金調達 | $89M(約97億円)シリーズB |
VC | Accel、Tiger Global Management |
URL | https://bryter.com/ |
※crunchbaseデータベース参照
NisshoUSA注目ポイント
ノーコードは現時点では決して万能ツールではありませんが、開発の民主化を実現するツールとして今後より注目されていくに違いありません。今回取り上げた最適な機械学習モデルを構築するIntersect labsのように、ある特定の機能に特化したツールも次々と登場していることから、個人のプロジェクトや中小規模のサービスであればノーコードで事足りるようになるでしょう。またアプリを作り込みたいという場合でも、現在では様々な機能をAPIで提供するAPIファースト企業などの登場でノーコードツールで不足している機能を簡単に実装できます。そうしたエコシステムができつつあることも、ノーコードを盛り上げる要因の1つです。数年後、開発はエンジニアだけでなく様々な業種の人がアプリを構築している未来になっているのではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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