世界中から注目を集める最先端テクノロジーの祭典SXSW(South by Southwest)が2022年3月11日から20日にかけて米国テキサス州オースティンとオンラインのハイブリッドで開催されました。初のハイブリット開催となった今年のSXSWでは、現地で行われるセッションが多く、オンラインでの配信はキーノートなど限定的なものとなりました。
SXSWは音楽の街であるオースティンで1987年に音楽祭として始まり、その後現在のような映画やテクノロジー要素が加わった幅広いテーマを扱うイベントとして成長してきました。2007年にはTwitterがSXSWアワード賞を受賞するなど、現在ではスタートアップの祭典として注目されています。
数多くの著名人による講演など充実したコンテンツが用意されるSXSWですが、そのなかで最も注目を集めるのがスタートアップによるピッチイベントです。今回はその受賞企業を分かりやすく紹介していきたいと思います。
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スタートアップピッチイベント
今年のピッチイベントには「Extended Reality & Immersive Technology」分野が新たに追加され、9のカテゴリー毎に事前審査で選ばれたファイナリスト企業が5社ずつ、計45社が出場しました。スタートアップのピッチは様々なイベントで開催されますが、SXSWではカテゴリーが多岐にわたり、さらにテクノロジーをアピールする企業よりも普段から人々が抱えている社会課題に着目している企業を取り上げる傾向があります。
各カテゴリーは以下の通りです。
- Artificial Intelligences, Robotics and Voice(人口知能・ロボティクス・ボイス)
- Enterprise and Smart Data(法人・スマートデータ)
- Entertainment, Gaming and Content(娯楽・ゲーム・コンテンツ)
- Extended Reality & Immersive Technology(XR・没入テクノロジー)
- Future of Work(働き方の未来)
- Health, Wearables and Wellbeings(ヘルスケア・ウェアラブル・ウェルビーイング)
- Innovative World(イノベーション)
- Smart Cities, Transportation and Logistics(スマートシティ・交通・ロジスティクス)
- Social and Culture(社会・文化)
ここからは早速、各カテゴリーでアワードを獲得したスタートアップを見ていきましょう。
1. Artificial Intelligences, Robotics and Voice(人口知能・ロボティクス・ボイス)
人口知能・ロボティクス部門では共感型AIプラットフォームを提供するhuma.AIが受賞しました。同社が提供するのは、顔の表情や声を分析するAIプラットフォームです。37種類の顔の動きを分析することでその人の感情を読み取り、分析したデータはウェルビーイングなどのソリューションに役立てることができます。
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【ファイナリスト】
- Hume AI (New York, NY) ★WINNER
- beingAI (Hong Kong, Hong Kong)
- CIRQ+ (Scottsdale, AZ)
- Mod Tech Labs (Austin, TX)
- Sylvester.ai (Calgary, Canada)
2. Enterprise and Smart Data(法人・スマートデータ)
法人・スマートデータ部門では、ブランドや小売店向けの在庫管理ソリューションを提供するSyrup Techが受賞しました。SyrupのAI分析プラットフォームは、ユーザーが保有するPOSデータなどをもとに将来の需要を予測します。その特徴は様々なカラーやサイズの組み合わせに対して需要を細かく予測できる点です。ブランドや小売店などはSyrupが分析する結果をもとに製造や仕入れを最適化できるようになり、理想的な在庫の実現が期待できます。
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【ファイナリスト】
- Syrup Tech (New York, NY) ★WINNER
- CaseCTRL (Houston, TX)
- KeyCaliber (Washington, DC)
- Mozart Data (San Francisco, CA)
- ZeBrand (New York, NY)
3. Entertainment, Gaming and Content(娯楽・ゲーム・コンテンツ)
娯楽・ゲーム・コンテンツ部門では、人生の大切な瞬間をフィギュアで残すAction Faceが受賞しました。結婚式やオリンピック観戦など、人生の大きなイベントでは写真やムービー、チケットなどを思い出として残しておく人が多いかと思いますが、Aciton Faceはその瞬間の素顔や状況をフィギュアで残すというものです。Action Faceのスマホアプリをダウンロードしたあと、写真をアップロードしてアプリ内で編集すると、思い出のフィギュアが後日自宅に届くという仕組みです。
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【ファイナリスト】
- Action Face (Berkeley, CA) ★WINNER
- Feelbelt (Berlin, Germany)
- Nailbot (Carlsbad, CA)
- Pianity (Paris, France)
- Social Cipher (Los Angeles, CA)
4. Extended Reality & Immersive Technology(XR・没入テクノロジー)
今年から新たに加わったXR・没入テクノロジー部門では、スマートフォン向けARアプリのMatsukoが受賞しました。Matsukoが提供するのは、スマホのカメラを自分に向けて発言することで、OculusやHoloLensを使用してVR空間にいる人に対して自分のホログラム映像を表示できるアプリです。これにより、VRデバイスを持っていなくともVR上で行われている会議にホログラム映像で参加できるようになります。
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【ファイナリスト】
- Matsuko (Kosice, Slovakia) ★WINNER
- iQ3Connect (Woburn, MA)
- Mictic One (Zurich, Switzerland)
- Reality Crisis (Helsinki, Finland)
- Zaubar (Berlin, Germany)
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5. Future of Work(働き方の未来)
働き方の未来部門では、現場労働者など非デスクワーカーを抱える企業向けのソフトウェアを提供するAnthill AIが受賞しました。同社のソフトウェアでは、非デスクワーカーである従業員のスキルを可視化し、人材を管理するためのデータベースを人事部向けなどに作成します。そのほか、現場から管理部門にすぐに連絡できるコニュニケーション機能なども備えており、非デスクワーカーにとってより働きやすい環境を提供します。
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【ファイナリスト】
- Anthill AI(Chicago, IL) ★WINNER
- I’mbesideyou (Minatoku, Japan)
- Lucy (Singapore, Singapore)
- Normal (Singapore, Singapore)
- OnLoop (Singapore, Singapore)
6. Health, Wearables and Wellbeings(ヘルスケア・ウェアラブル・ウェルビーイング)
ヘルスケア・ウェアアブル・ウェルビーイング部門では、ホームヘルスケア向けの聴診器Feelixを提供するSonavi Labsが受賞しました。患者が自宅でFeelixを使うと、そのデータが医師へ送信されるという仕組みです。分析されたデータは患者自身も見ることができるため、自分の体調を常に可視化し把握できるようになります。
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【ファイナリスト】
- Sonavi Labs (Baltimore, MD) ★WINNER
- Nephrodite (Austin, TX)
- NxgenPort (St. Paul, MN)
- Botanisol Analytics (Boston, MA)
- SmartTab (Denver, CO)
7. Innovative World(イノベーション)
イノベーション部門では、3Dプリンターと革細工を組み合わせて100%リサイクル可能な靴を製造するHilosが受賞しました。既にReebokやAdidasなどの大手靴ブランドが3Dプリンターを活用している中、Hilosの特徴はオンデマンドで製造する点と100%リサイクルできる素材を利用している点です。製造に必要な機材は3Dプリンターのみでそのほかは革細工で作られるため、従来型の大きな製造設備を保有する必要はなく、必要なものを必要なだけ作ることで従来型のサプライチェーンの改革を目指しています。
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【ファイナリスト】
- Hilos (Portland, OR) ★WINNER
- Dastgyr (Karachi, Pakistan)
- Kleiderly (Berlin, Germany)
- Nth Cycle (Beverly, MA)
- SAVRpak (San Juan Capistrano, CA)
8. Smart Cities, Transportation and Logistics(スマートシティ・交通・ロジスティクス)
スマートシティ・交通・ロジスティクス部門では、犯罪事件などで使われる映像証拠を分析するJusticeTextが受賞しました。刑事事件の80%以上に映像証拠が使われる中、JusticeTextは自動で文字起こしを提供するほか、音質の悪い部分を特定して補正する機能を備えています。現在、刑事事件を扱う弁護士などが複雑な映像をより素早く分析するためにJusticeTextのツールを使うケースが増えています。
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【ファイナリスト】
- JusticeText (Irvine, CA) ★WINNER
- 4.screen (Munich, Germany)
- HeyCharge (Munich, Germany)
- Glaza (Los Angeles, CA)
- Kiro Action (Austin, TX)
9. Social and Culture(社会・文化)
社会・文化部門では、アスリートと企業を結ぶプラットフォームを提供するMOGLが受賞しました。同社のプラットフォームでは、イメージアップや広告のためにアスリートを活用したい企業をアスリートとマッチングします。収益の一部は十分な資金援助が受けられていない地域社会に寄付し、青少年のスポーツプログラムの支援を目指しています。
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【ファイナリスト】
- MOGL (Miami, FL) ★WINNER
- IMMAD (Quincy, MA)
- Sustain.Life (New York, NY)
- Gregarious (New York, NY)
- Pinwheel (Austin, TX)
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NisshoUSA注目ポイント
私が注目したのは今年から新たに加わったXR・没入テクノロジー部門です。今回のようにオフラインとオンラインのハイブリッド開催のイベントが一般的になる中、VR上での参加・コミュニケーションは今後ますます増えると予想されます。そのため、今回アワードを受賞したMatsukoのように、VRデバイスを持っていない人でもVR空間に簡単に参加ができるアプリやサービスは今後より求められてくるのではないでしょうか。私も最近Oculus2を使うようになりましたがやはり持ち運ぶのはまだちょっと大きく重いため、アプリで簡単にVR空間に入れるサービスが欲しいと感じることがあるためです。
引き続きVR領域で生まれる新たなビジネスから目が離せません。
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