シリコンバレーテクノロジー 2023.07.01

【Cisco Live 2023速報】ネットワーク運用管理者の負荷を劇的に改善するCiscoの攻めの一手とは?

米国時間2023年6月4日から8日にかけて、ラスベガスでCisco Live2023がオンライン・オフラインのハイブリッド形式で開催されました。会期中はAI、クラウド化、セキュリティ、IoT、サステナビリティなど広い領域で新製品や戦略の発表、事例の紹介などが多数行われましたが、なかでも重きが置かれていたポイントが「統合管理」と「セキュリティ」です。

そのなかから今回は、生産性の向上につながる新ツールやエコシステム戦略に注目して紹介していきます。

ネットワークの運用を統合して管理をシンプル化する「Cisco Networking Cloud」

現代のネットワークは、アプリ、セキュリティ、ネットワーク、クラウドコンピューティング、ストレージなど、さまざまな要素が組み合わさっており、管理が非常に困難です。実際、インフラ担当者の多くは何十もの監視・観測ツールを日常的に利用しています。

今回のイベントでは、そうした状況に対する有効な打ち手として「Cisco Networking Cloud」が発表されました。これはさまざまな製品の運用モデルを統一する統合プラットフォームで、活用すれば製品の運用を簡素化することができます。特に無線関連製品の管理や、データセンター事業者がプラットフォーム上にばらまいたソフトウェアルーターの管理における効果が期待されており、ユーザー事例も紹介されました。

このプラットフォームでは、すべてをクラウド上で管理するため自動化がしやすいという特徴もあります。また、Ciscoが買収したThousandEyesとの連携により、ネットワークにおける問題の特定から影響を受けたユーザーのネットワーク経路の調査までシームレスにできるようになります。Cisco製品以外ではAWSと連携しており、AWSのインフラに関する洞察も得られます。

セキュリティスタックの連携を加速させる「Cisco Secure Access」

セキュリティ業界は長い間、「セキュリティスタック」と呼ばれる多数のセキュリティ製品の連携に悩まされてきました。この問題に取り組むため、CiscoはAIを活用したセキュリティクラウドを導入したセキュリティサービス一式(メールセキュリティ、Webセキュリティ、エンドポイントの監視など)、暗号化や脅威の検出、クラウドセキュリティなどの機能を提供しています。

今回発表された「Cisco Secure Access」は、そうしたセキュリティスタック問題の解決をさらに加速する新製品です。Appleとの提携も計画しており、iCloudやプライベートリレーを拡張することで、VPNの利用をせずとも企業ユーザーが安全にインターネットアプリやプライベートアプリにアクセスできるようになります。

他社とのコラボレーション機能の強化により、ハイブリッドワークの生産性を後押し

ほかにもCiscoが注力しているのが、AIを搭載した音声やビデオ品質の向上、自然言語処理、データ分析などの開発です。例を挙げると、音声についてはバックグラウンドノイズの除去、ビデオに関しては自動照明補正、自然言語処理ではリアルタイムのテキスト化などがあります。同社はマイクロソフトやZoom、Google社とのエコシステムも構築し、アプリのシームレスな連携をサポートしています。

また、将来的には拡張現実技術を取り入れた没入感のあるミーティングプラットフォームの構築も視野に入れているほか、「ミーティングゾーン」や「コールセンターの業務効率化」に関するビジョンも語られました。コールセンター向けの製品には、生成型AIの組み込みやスタッフのスキルアップを効率的に行えるAIコーチングなどの機能の組み込みを構想しています。

さらにAT&Tとの協業により、ワイヤレススマホ機能にWebexの機能をネイティブに組み込んだほか、中小企業向けのSD-WANパッケージの提供も開始。ネットワークの信頼性を高めることにより、ハイブリッドワークの生産性を後押しします。

NisshoUSA注目ポイント

統合管理やセキュリティについては、一般的に「構成管理」「自動化」「オーケストレーション」といったキーワードをもって、すでに語りつくされている印象を持っていたのですが、今回はそこにAIを組み込むことで、運用効率の向上に大きなインパクトを与えている印象を持ちました。ネットワーク機器やセキュリティの運用者がデバイスごとに異なる運用に苦労している現状があるため、企業にとっては地味ながらも大幅なTCO削減が期待できるのではないでしょうか。

さらに、Appleとの提携、AWSを含めた統合管理などについてもに興味深いポイントでした。エコシステムの構築により、ユーザーは複雑な設定を行わずして異なる製品同士の連携や統合的な運用のメリットを享受できるのは非常に良いことです。結果的に設計がシンプルになり、さらに運用負荷が減っていくというサイクルを生み出せる点で注目のポイントだと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。
Nissho USAは、シリコンバレーで35年以上にわたり活動し、米国での最新のDX事例の紹介や、斬新なスタートアップの発掘並びに日本企業とのマッチングサービスを提供しています。紹介した事例を詳しく知りたい方や、スタートアップ企業との協業をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

この記事を書いた人

Takashi Momma

2007年に日商エレクトロニクス(現 双日テックイノベーション)入社。Arbor Networks(現 Netscout)などネットワークおよびセキュリティ関連製品立ち上げ、事業推進を担当。2022年よりNissho USA(現 STech I USA)に赴任。当社が目指す「お客様との事業共創」を実現すべくシリコンバレーの最新情報の提供、オープンイノベーションをベースとしたビジネスモデル開発に向けて活動中。 趣味はサッカー。

この記事をシェアする

私たちと話しませんか?