こんにちは、Nissho Electronics USAの新田です。
2023年6月7日~8日に、当社のパートナーJuniper Networks社が主催する「AI in Action 2023」に参加してきました。開催されたのは2021年11月から数えて3度目です。
イベントで実感したのは、AIでネットワーク運用を変革する時代が来たのだということでした。今回は、イベントで語られたAIネットワークの発展やJuniper Networksの取り組みのポイントを箇条書きで紹介していきます。詳しい内容をご希望の方はぜひお気軽にお問い合わせください。
AI in Action 2023 by Juniper Networksとは?
- Juniper社がエンタープライズ企業を集め開催するネットワーキングイベント。
- 主な目的は、企業ネットワークへのAI導入による運用変革についての学習と情報交換。
- IT環境を、AIを軸に据えた「AI-Driven Enterprise」に進化させるべく挑戦する企業が多く参加し、活発な意見交換が行われた。
Juniper Networksが提供するMistとは?
- Juniper社が買収したMist Systemsが作ったWi-Fiソリューション。
- 米国大手リテール企業をはじめ、GAP、ServiceNowなど大手エンタープライズ企業に数千~数万台規模で採用されている。
- 導入メリットは次の2点。
(1) 一晩で3,000台導入などの大規模展開が可能
(2) チケット件数の大幅削減につながる(ServiceNow事例では90%削減)
データから始まったMistのAIネットワークへの挑戦
- Global Vice President & Chief AI Officer Bob Friday氏による講演。Bob 氏はWi-Fiの父と言われる。
- 同氏は2014年にCEO Sujai Hajela氏とMist Systemsを設立。Wi-Fiベンダーという認知が広まったが、本質はネットワーク管理におけるパラダイムシフトを遂げることが目的だった。
- Bob氏がCisco勤務時、業務環境におけるストレスはWi-Fi要因とのレッテルを貼られ、それらはコントローラ再起動で解決したように思われていた。しかし実際には、それが根本的な解決策ではないケースが散見された。
- その後2011年に、WatsonがJeopardyに参加して他候補者に勝つのを見て、自分達もAIを作り、Network環境を変えられると考えた。
- Mist Systemsを設立した理由は、他社Wi-Fiでは各種データ取得が限られ、かつリアルタイムAI処理を賄うクラウド環境が提供できなかったため。
- ユーザー体感に関わる理解と根本的解決のため、データ取得センサーとしてのWi-Fi開発と同時に、膨大なデータに対してリアルタイムでAI処理を行うためのクラウド・AI基盤開発を進め、同領域におけるビジネスを開始。
- 多くの導入実績と効果から、ネットワーク環境の理解と解決策提示に繋がっている。
Juniperが追求する、ストレスを感じないネットワーク環境
- Juniperはこれまで、AIネットワークの実現に向けて以下3つのステップに取り組んできた。
(1) イベント情報からアクションに繋がる答えを提示
(2) ユーザーエクスペリエンスを追求し精度を向上
(3) 自然言語生成(Conversational Interface)によりネットワークが人間のように回答し、信頼を獲得 - 多様な領域でAI活用が進む中、IT運用におけるAI活用(AIOps)も昨年度来大きな注目を浴びているが、その実現にはJuniper MarvisなどのAIエンジンがより多くの情報を入手し的確な対処を示すことが重要。
- 実際にJuniperでは、自身がMarvis最大のユーザーとなり、自社・顧客環境イベントから的確なアクションを行ったことで、多くの顧客環境においてチケット発行量が減り満足度が上がった。
- ただ、これだけでは根本的な課題解決(ユーザー満足度向上)に繋がらない。アプリケーション利用時の体感とネットワーク環境は必ずしも同じではないため、ユーザー体感満足向上を追求する必要がある。
- データ活用における最重要事項は、ユーザーエクスペリエンスアプリからラベルデータ*を取得すること。ラベルの名前と特徴データを組み合わせ、パフォーマンスを正確に予測するモデルを構築して初めて、ユーザー満足に繋がる打ち手を判断できる。
*(参考)ラベルデータ:1つ1つのデータに対し与えられる正解を示す情報。機械学習の正確性を追求する重要要素。 - 最近発表されたZoomとのネイティブ連携は、音声遅延・画像停止などの体感とネットワーク課題を繋げ、本来のユーザーエクスペリエンス向上に貢献している。
ServiceNowもAI活用でユーザー満足度向上に挑戦
- ServiceNowでVP, Digital Technology Experienceを務めるVenkat Lakshminarayanan氏による講演。同氏は2018年以来、社内全ITサービスに責任を持ち、IT運用の変革に挑戦してきた。
- ServiceNowが掲げるのはサービス停止ゼロ、障害ゼロ、現地作業ゼロの「Three Zero Strategy(3ゼロ戦略)」。
- 新技術を採用すると共に、機能をフル活用することで、IT変革を促し、ビジネス成果に繋げている。
- 戦略実行においてMist+Marvisは欠かせない要素。ネットワークアクセス不可となったユーザー環境への予測・予防・治療を実施し、ユーザークレームゼロを追求中。
- コロナの影響から、リモートによるゼロタッチ・作業自動化対応は必須となったため、ServiceNowプラットフォームとMist+Marvisのインテグレーションを実施。同プラットフォームでの一括Juniperファームウェアアップグレード可とした。この機能はServiceNowユーザーも利用できる。
今後AI Networkingはさらに発展
- Bob氏は、AIがあらゆる側面を支配すると産業革命が起こると考えている。
- たとえば病院では、患者が医師にAIを利用して診断して欲しいと依頼するかもしれない。人による車の運転が違法になる可能性もある。
- AIに求められるのは、人間の専門家がこなすタスクを代わりに実行できる能力。そこで重要なのは人との接点において信頼・安心感を勝ち得ることである。
- 自然言語生成により、ネットワークに命が吹き込まれる。ただしAIアシスタントとして運用者の信頼を勝ち得るまで本格的な活用には至らない。このステップは、人がAIアシスタントを信用しネットワーク変更を実施させるために欠かせない。
今後のJuniper Networksの展望
- 現在Jupiperは、Wi-Fiに加えてJuniper Switch/Router製品を提供することで、無線環境のみならず有線環境におけるケーブル問題検知・パフォーマンス問題の探知を可能にし、各社のAIネットワーク実現において重要な役割を果たしている。
- 同時に、ストレスを感じないネットワーク環境を提供し、人の信頼を勝ち得るため挑戦を続けている。
- Juniper AI-Driven Enterpriseビジョンとして、自社環境を全て把握し、主体的に行動できるネットワーク有資格者が常にそばにいる状態を提供することを掲げている。つまりそれは、「今誰が不満足か」という問いに対し、状況を確認して回答と対策を示すことができる状態である。
- これら変化を把握し対処できることこそがゲームチェンジであり、Juniper Networksの挑戦は続く。
NisshoUSA注目ポイント
企業が最大の成果を出す上で、従業員がストレス・ムダなく業務が行える環境を提供することは必要不可欠です。そのためにはITにおいて人依存を限定し、リアルタイムに課題解決ができる環境を作る必要があります。さらに企業のデジタル戦略において、開発・データサイエンス・サポートチームがデータを中心とした施策を打つことも欠かせません。
本イベントでは、Juniperがそうした体制や文化、そしてプラットフォームを構築して企業のIT変革を促す先駆者だということをよく理解できたと共に、AIがすでにネットワーク業界で使われ始め、発展フェーズに入っていることに感銘を受けました。
AI技術の活用領域は広く、期待先行で進んでいく傾向がありますが、目標・戦略を明確に定めて着実に進めていくことが重要です。我々も今後の取り組みにおいて意識していきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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