2019年12月2日から6日にかけて米国ネバダ州ラスベガスにてAWS年次カンファレンスである「re:Invent」が開催されました。注目を集める新機能の発表以外にも、AWSを活用してビジネスの成長に繋げた米国企業の登壇もあり、会場は終日盛り上がりを見せていました。その中で今回は米国に展開しているカジュアルファッションブランドのrue21の事例を通して、DX(デジタルトランスフォーメーション)が実現した同社の復活と、その成功にとって一番大切な鍵を紹介していきたいと思います。
2017年に倒産したファッションブランド・rue21
1970年創業、ペンシルベニア州に本社を置くカジュアルファッションブランドです。米国で約700店舗を展開しており、流行のデザインを取り入れた洋服やアクセサリーなどを低価格で提供していることが特徴です。2017年にはチャプター11(連邦倒産法第11章)の適用を申請し、現在は新たなオーナーであるヘッジ・ファンドのブルーマウンテン・キャピタルマネジメントによって再建を図っています。この2年間で復活を遂げたrue21ですが、その鍵となったのはITを活用したデジタルフォーメーションの取り組みでした。
rue21のオンラインサイト
データ活用ができずユーザーからのエンゲージメントが低下
様々な要因で倒産に至った同社ですが、その最も大きな原因は、ユーザーの行動分析やフィードバックを疎かにしていたことで、ユーザーが他社に流れてしまい売上の減少に繋がったことだと分析しています。同社ではPOSデータ、販売分析、CRMなど、大量の販売データを保持していましたが、データ管理はサイロ化されており、せっかくの有益なデータを活用することができていませんでした。その結果、オンラインでもユーザー毎にパーソナライズした提案を行うことなく、プロモーションも固定化。結果としてユーザーのエンゲージメントが低下し、売上減少、そして倒産という結果に至ったのです。
データがサイロ化されており、ユーザーへ同じプロモーションしか実行できない
実践したDXはデータを集約するCDPの構築
再建を目指して同社が取り組んだのが、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)の構築です。目指したのは、サイロ化されたデータを統合して、貴重な資産である販売データを「ビジネスに活かせるデータ」にすること。こうして、2018年から2019年にかけて、CRM、オンラインでの取引情報、POS情報などさまざまなデータをCDPへ統合したのです。2020年にはユーザーからのフィードバック情報なども統合し、同社が持つデータの価値をさらに高めることを目指しています。
CDP構築までの道のり
データ活用で高精度のパーソナライゼーションを実現
CDPを構築したことで、大量にあったデータを活用ができるようになった同社が手がけたのが、コンテンツをユーザー毎にパーソナライズすること。それぞれのユーザーに適した提案をするキャンペーン、オンラインサイトでのパーソナルページなどを実現し、ユーザーとのエンゲージメントを高めることに成功しました。その成功要因となったのはデータの精度です。CDP基盤を構築する際、ユーザーとの全てのタッチポイントから分析を行うという方針でデータ統合・分析したことにより、もともと持っていたデータを価値あるものに変え、その結果パーソナライズの精度が非常に高くなったのです。
様々な角度でユーザーのタッチポイントを意識
CDP基盤を支えたのはAWSとMantahn
2年間という短期間で再建方針を決めCDP構築まで行った背景には協力パートナーの支えがありました。パワフルでスピーディな基盤を提供するAWSと、そのインテグレーションをサポートしたMantahnです。AWSが提供するEC2はもちろん、MBA(マーケットバスケッツ分析)などさまざまな機能を駆使して、同社にとって最適な基盤を作り上げたのです。
まとめ:DX実現の鍵は課題の発掘
rue21が再建に成功した鍵は自らの課題を明確に見出すことができた点です。CDPによるデータの活用は、あくまでも「ユーザーのエンゲージメントを高める」という課題を解決する手段だったのです。
ここで取り上げたデジタルトランフォーメーションを始め、ビッグデータやAI、イノベーションなど、世の中で様々なキーワードが溢れており、「ITを駆使しなければ時代に取り残される」という危機感ばかりが増しているように感じられますが、最も重要なのは自らが抱えている課題を見つけ出すことです。今回ご紹介したrue21のように課題を正しく見出すことができれば、その解決に向けてITの力を最大限利用することができるでしょう。
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