MIT(マサチューセッツ工科大学)から2021年に躍進する10大テクノロジーが発表されました。2021年のトレンド予測については、以前に「著名ベンチャーキャピタルLightspeedが予測する2021年の10大トレンド」や「暗号通貨での特典からオフィスのホテル化まで!CBインサイツによる2021年のテックトレンド12」でも紹介しましたが、今回のMITはよりテクノロジー視点でのトレンド予想となっています。
今回はその10のテクノロジートレンドについてお伝えしたいと思います。
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- Messenger RNA vaccines(メッセンジャーRNAワクチン)
- GPT-3(文章生成言語モデル)
- TikTok recommendation algorithms(TikTokのリコメンドアルゴリズム)
- Lithium-metal batteries(リチウム金属電池)
- Data trusts(データトラスト)
- Green hydrogen(グリーン水素)
- Digital contact tracing(デジタル接触者追跡)
- Hyper-accurate positioning(超高精度な位置情報)
- Remote everything(全てがリモート化)
- Multi-skilled AI(マルチスキルAI)
1. Messenger RNA Vaccines(メッセンジャーRNAワクチン)
これは現在各国で承認されている新型コロナウイルスに対するワクチンで、1年以上続いているパンデミックを収束させる役割が期待されています。mRNA(Messenger Ribonucleic Acid)をベースにしたワクチンは今回初めて実用化され、今後はさらにがん治療や再生医療などに対する活用が予想されていることから、医療変革に繋がる可能性がありそうです。
2. GPT-3(文章生成言語モデル)
まるで人が書いたような文章を作ることができる文章生成言語モデルのGPT-3(Generative Pre-Training3)が注目を集めています。GPT-3はインターネット上のテキストや何千もの書籍のテキストを学習しており、いくつかのキーワードや文章が入力されると次に出るべき適切な文章を予測して提示します。
GPT-3の実証実験で公開されたアプリを作成する事例では、作りたいアプリのキーワードを入力するだけで、GPT-3がプログラミング言語を入力して数秒でアプリを作成しました。今後様々な場面で適用できることが期待できる一方、GPT-3自体は自分が生成した文章についての意味は理解できないため、時には意味不明な文章を生成するという問題があります。またGPT-3に膨大な計算能力やデータ、資金などが必要なため、現在使用できるのは研究所など限られています。
3. TikTok recommendation algorithms(TikTokのリコメンドアルゴリズム)
2016年に中国でサービスを開始して以来、TikTokは世界で最も急速に成長したソーシャルネットワークの1つとなりました。その要因の1つが、アプリ内のフィードを動かしているアルゴリズムです。多くのSNSでは大衆受けするコンテンツに重点を置いていますが、TikTokのアルゴリズムではユーザーが関心を持つニッチなコミュニティをフィードに表示するということに長けています。そのため、新しいクリエーターでも多くのレビューを受けることができ、ユーザーも様々なコンテンツを発見できるという仕組みです。TikTokの成長を支えたこのアルゴリズム・仕組みは今後ほかのSNSでも取り入られると予想されています。
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4. Lithium-metal batteries(リチウム金属電池)
電気自動車(EV)が普及するうえでの課題は価格面だけではなく、1回の充電で可能な走行距離や充電時間などあります。これは主にリチウムイオン電池の限界によるものでしたが、現在それに代わる新たなバッテリー「リチウム金属電池」に注目が集まっています。そのリチウム金属電池を開発しているシリコンバレーのスタートアップQuantumscapeは初期のテストで走行距離を80%向上させるなどの結果を出しており、新バッテリーを搭載したEVを2025年までに販売開始するという計画をVW(Volkswagen)と一緒に打ち出しています。リチウム金属電池はまだ試作品の段階ですが、実装できるようになればEVの普及を後押しするきっかけとなりそうです。
5. Data trusts(データトラスト)
日々活用しているサービスがセキュリティ事故を起こして個人情報が漏洩してしまう、利用規約を読まずに「はい」のボタンをクリックしたことで知らない内に個人情報が収集されているなど、個人情報に関連するトラブルは後を断ちません。個人で情報を管理するのには限界が来つつある中で今注目されているのが、データトラストという概念です。これは個人に代わって個人情報の管理を専門の法人に任せるというもので、委託を受けた法人はユーザー利益のために行動するという法的義務を負うことになります。データトラストの概念はまだ明確に定義されておらず、さらに現在発生している個人情報に関連する様々な問題の解決策になり得るかどうか議論されている最中ですが、新たな個人情報管理の概念に注目が集まっています。
6. Green hydrogen(グリーン水素)
化石燃料に変わる物質として注目されているグリーン水素は今後ますます期待が高まっていくことが予想されます。その背景にある要因の1つは、グリーン水素を生成するもとになる太陽光発電や風力発電などの再生エネルギーのコストが下がたことで、実用的な価格になってきたことです。既にヨーロッパではグリーン水素を生成して利用するまでのインフラ設備を準備し始まめおり、今後その動きが世界中に広まっていくことが期待されます。
7. Digital contact tracing(デジタル接触者追跡)
新型コロナウイルスが蔓延し始めた頃に、GPSやBluetoothを活用し、ウイルスに感染した可能性のある人にアプリで通知することでウイルス拡散防止につなげることが期待されました。AppleやGoogleもいち早くそのような機能を実装してリリースしましたが、ユーザーへの啓蒙に時間を要してしまい、結果的には期待していたほどウイルス拡散防止につながりませんでした。この教訓を次のパンデミック対策だけではなく、ヘルスケア分野などにも活かすことが期待されています。
8. Hyper-accurate positioning(超高精度な位置情報)
私たちの生活においてGPSはもはや欠かすことのできないものです。現在のGPS精度は5メートルから10メートル以内にあるのに対し、超高精度な位置情報システム技術では数センチから数ミリ以内の精度を実現することができると予想されています。2020年6月に完成した中国のグローバルナビゲーションシステムBeidouでは、世界中の人々に対して約2メートル以内の精度を提供することができ、さらに地上で補強機能を実装することでミリ単位の精度まで向上できるようです。今後のGPSの精度は数センチまで向上することが期待される中、人々の生活やビジネスに大きな影響を及ぼすことが予想されます。
9. Remote everything(全てがリモート化)
新型コロナウイルスの影響で様々なものがリモート化を余儀なくされました。私生活やビジネスに大きな影響を与えた中、リモート化の移行が特に重要だったのは教育と医療の分野です。教育分野では世界中を見渡せばまだ授業のオンライン化ができていない国々がある一方で、オンライン家庭教室のSnapaskはアジア9カ国で350万のユーザーを獲得することに成功、インドの学習アプリByju’sもユーザー数を7,000万人近く増やしました。またウガンダなどのアフリカ諸国では遠隔医療の取り組みで何百万もの人々へ医療を提供しています。今後もリモート化の波は止まらないでしょう。
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10. Multi-skilled AI(マルチスキルAI)
AI(人工知能)は飛躍的な進化を遂げましたが、新たな課題を解決したり、慣れない環境を移動したりするなど、苦手な作業はまだ多くあります。現在AIは、コンピュータービジョンや音声認識で物や音を認識することはできても、見たり聞いたりしたことを「話す」ことはできません。しかしこれらの能力を1つのAIとして統合し、見て、聞いて、感じて、伝えることができるロボットなどができれば、より生産的に人間のアシストをできるようになるかもしれません。Karen Hao氏(MIT Technology Reviewのレポーター)は複数の感覚を持つAIがどのように世界を変えていくか、その未来に期待しているそうです。
NisshoUSA注目ポイント
私が今回のトレンド予測で最も注目をしたのはGPT-3です。今後モバイルアプリや様々なウェブサービスを構築する中で新たな開発手法「ノーコード開発」が注目をされていますが、GPT-3を活用するとさらに誰でも簡単にモバイルアプリなどを作成することができる可能性があるからです。もちろんまだまだコスト面や実用化できるほど出来上がっているわけではありませんが、将来的には様々な場面で実用化されることが想定されます。個人的に現在スキルアップのためにプログラミング言語を学習中ですが、GPT-3のテクノロジーを調べるうちに将来必要になる知識はどのようなものか、改めて考えるきっかけとなりました。
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