シリコンバレーテクノロジー 2019.02.26

アメリカで進む5G導入と活用事例3選

こんにちは、Nissho Electronics USAの小松です。

CESやMobile World Congress等、世界的なITイベントやカンファレンスで5Gが注目を浴びていることは言うまでもありません。

ここ米国においても、5Gへの投資は各国との経済競争における重要な役割を担うとして、国家をあげた優先事項になっており、徐々にそのサービス実現が具現化しております。

今回は、米国大手通信事業者における5Gへの取り組みに触れながら、将来実現が期待されているその活用事例についてご紹介していきたいと思います。

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4G/LTEと何が違う?

そもそも、5Gは4G/LTEと何が異なるのでしょうか。各国の様々な業界の事業者が注目し、新しいサービスが期待される5G。

本題に入る前に、5Gが現在我々が使っている4G/LTEと比べてどのような点で優れているのか3つのポイントで簡単に触れておきます。

1.高速・大容量

5Gは従来比約10倍の速度を誇ります。これにより今まで数分~数十分要していた映画や音楽のダウンロードがわずか数秒にも満たない時間で可能になります。

より高画質かつ大容量の通信が短時間で処理できるため、4Kの次に注目されている8Kにも耐えうる程の速度なのです。

2.低遅延

5Gを使うと1ミリ秒以下の低遅延を実現すると言われており、これは従来の約1/10にあたります。これが実現されることにより、遠隔での医療やロボット操作、自動運転といった、よりリアルタイム性が求めらるサービスの可能性を広げることができます。

3.同時多接続

1つの電波収容局で同時に接続収容可能なデバイス数が格段に上がることも5Gの強みです。一度に収容できる数は100万になると言われています。これは従来のスマートフォンやタブレット接続のみならず、例えば工場内に多数存在するセンサー、家庭内家電、我々が身に着けるウェアラブル端末等、全てのものがつながるIoTを1つの電波収容局で同時接続することができるくらいのスペックなのです。

5G元年となる2019年、米国大手通信事業者の取り組みは?

デロイトの調査によると、既に世界各国で72の通信事業者が5Gサービス実現に向けた評価を開始しており、そのうち25事業者が2019年内に5Gサービスをリリースすると言われています。2020年までにはその数は倍になるとも書かれています。

米国の5G実現においては、4大通信事業者が競争しており、AT&TとVerizonが先行し、その後にSprintとT-Mobileが続くといった構図になっています。

例えば、AT&Tは全米12都市で既に5Gサービスを先行して提供し始めています。当社USオフィスがあるサンノゼでも2019年内にサービス開始が予定されています。また、既に一般企業での採用事例も見られており、Deep South Studioというビデオ制作会社では高画質ビデオ伝送インフラとして5Gを活用することが決定しています。

また、Verizonは主に宅内向けや自治体向けサービスに注力し、昨年10月より複数都市でサービスを開始しました。一方、SprintとT-Mobileは企業統合による豊富なインフラ基盤を活用し、大手2社に対向しようと投資を加速しています。

残念ながら、スマートフォンやタブレット端末自身は現時点で5Gに未対応なので、我々自身が利用できるのはもう暫く先になりますが、5Gを提供するための土管となるインフラへの整備は着々と進んでいます。

具現化されつつある5Gを活用したサービス

では、4G/LTE以上の力を発揮する5Gが実現するとどのようなサービスが生まれるのか、いくつか直近の具体例をあげながらご紹介していきたいと思います。

1.スマートハイウェイ

5Gと密接にリンクするサービスの1つに自動運転があげられますが、それと平行して検討されているのがスマートハイウェイです。

スマートハイウェイとは、高速道路を走行する車の車両内に取り付けられた様々なセンサーや通信設備と、高速道路上に設置されているスマートシステム(例えば、電力供給システムや料金所、街灯等)が連携させることでより安全で便利な運転を実現するものです。

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これらの情報から、事故を予測、回避したり、万が一事故が発生した場合においても、その問題の原因をデータに基づき特定し、事故防止対策を強化したりと、より安全性の高い自動運転環境が実現されることになります。

車両や道路上のスマートシステムから提供されるデータをAIで分析するという取り組みもトレンドの1つです。

2.遠隔医療

米国では5GとVR/ARを活用した遠隔医療の取り組みが進んでいます。例えばAT&TとVITAS(終末期医療の大手プロバイダ)は、遠隔から患者をケアするツールとして以下2つの目的でVR/AR技術を検証しています。

1つめはVR/ARを活用し、患者が感じる快適度をあげるという取り組みです。VR/AR技術を活用し、仮想的に大自然での旅行を体験させたりすることによって、あたかもその場にいるような安心感を与え、患者の精神状態や健康状態を安定に保つことを目的としています。

2つめは、自宅での診療が中心になるような場合に、映像や診療データといったコンテンツのモバイル化によるデータ通信にも耐える環境を整備することを目的としています。

3.スポーツ、エンターテイメント

米国プロバスケットボール競技であるNBAのファン体験向上にも5Gの活用が注目されています。

先般、NBA所属チームの1つであるSacrament KingsがVerizonの5GテクノロジーとVR/AR技術を活用した360度視点でのファン体験デモを開始しています。

来場者はこのサービスを使うことで、ライブストリーミング映像を通して様々な角度から選手の動きや試合の様子を視聴体験でき、リアルタイム統計等、まさに没入型の体験を得ることが可能になります。

これは米国のスポーツフランチャイズでは初の試みとなり、スポーツやエンターテイメント業界での5G活用事例として大きな一歩を踏み出しそうです。

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まとめ:5Gに求められるものは「イマーシブ(没入できる)」かつ「パーソナライズ(個々に根差した)」サービス

5Gは高速・大容量、低遅延、多接続といった点で4G/LTEを上回る技術になるため、それ自身を実現するための技術進歩も勿論必要です。しかしながら、それ以上に構想した5Gのうえで何を提供するか、どのようなコンテンツやアプリケーションをどのようにサービスとして提供するかが非常に重要だと感じています。

今回紹介したような米国で大手通信事業者とメディアやコンテンツ事業者等の統合が顕著なのもその表れだと思っています。

特に顧客体験という意味では「イマーシブ(没入できる)」「パーソナライズ(個々に根差した)」がキーワードになってきています。5Gをとりまく環境でビジネス開発していくためには、今まで以上にエンドユーザ体験、それも個々人の体験を常に意識していくことが求められそうです。

Nissho Electronicsは最新テクノロジートレンドも視野に入れた、デバイスにとどまらない提案と構築・保守・運用の一貫したソリューションをご提供しています。サービスの詳細はこちらからご覧いただけます。また、弊社へのお問い合わせはこちらのフォームよりお気軽にご連絡ください。

この記事を書いた人

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Nobuyuki Komatsu

2004年、日商エレクトロニクス入社。JuniperやBrocade、Viptelaなどネットワークを軸としたインフラ製品の事業推進や新規ベンダー立ち上げに関与。2017年10月よりサンノゼ赴任。シリコンバレーで得られる最新の情報を発信しつつ、新たなビジネスモデル開発に向け日々奮闘中。2020年現在の担当領域は、クラウドやフィンテック、インシュアテックなど。バスケットボールとキャンプが趣味。

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