次々と新しいビジネスモデルを生み出し続けているサンフランシスコ/シリコンバレー。Airbnb・Slackはその中でもユニコーン企業といわれる未上場で時価総額を1000億円を超える企業の代表格です。そして両社はSaaS企業(ソフトウェアをサービスの中心とする企業)として全世界での事業展開に成功しています。
参考記事:未上場で評価額10億ドル以上のユニコーンTop10
両社の共通点として未上場・ユニコーン企業・SaaS企業・サンフランシスコに本社を持つということが挙げられます。しかし、ビジネスモデルに焦点を当てると、全く違うモデルを用いていることがわかります。今回は両社のビジネスモデルを比較し、検証を行います。
Airbnbとは
Airbnbとは家のスペースを貸し出したい人と、ホテルではなく安い値段で旅行先で泊まりたい人のマッチングを手助けするプラットフォームです。個人の所有物(スペース)を他人と共有することからUberとならんでシェアリングエコノミーといわれる代表格のスタートアップ企業です。
日本では旅行業法との兼ね合いで海外ほどの盛り上がりは見せていませんが、現在は届け出さえすれば「ホームステイ型」での貸し出しは可能です。東京・大阪であれば10,000を超える物件掲載数を誇っています。
現在では部屋を貸し出す人の数が世界190カ国、34,000以上の都市で150万を超えます。加えて2016年の企業価値は3兆円を超え、非常に高い可能性を秘めていると評価されています。
Airbnbのビジネスモデル
Airbnbは旅行先の家を提供するホストと旅行客を繋げて部屋を借りるプロセスを容易にするプラットフォームです。このビジネスモデルは所有者が必要ないものを貸し出すというモデル、つまりシェアリングエコノミーと呼ばれています。
Airbnbは貸し出す物件を所有しておらず、ホストと旅行客のマッチングシステムをユーザーに提供しています。このマッチングが行われるときに、旅行客・ホストのそれぞれにサービス料として手数料が発生します。
2者から支払われる手数料によって収益を上げているのです。1つ1つの収益はたいして大きいわけではありませんが、マッチングがたくさん行われば行われるほど収益は増加します。
ホスト側のメリット
- 手間をかけず空いたスペースのみで稼げる
- 旅行者から様々な旅の話ができ交流が可能
ゲスト側のメリット
- 安い
- 当日中でも宿が見つかる
- 現地の人との交流ができる
Airbnbの創設期
Airbnbは当初3名(Joe Gebbia, Brian Chesky, Nathan Biecharczyk)で始めたビジネスです。彼らは当時サンフランシスコに住んでいましたが、高すぎる家賃を払うことができませんでした。そこで彼らは家賃を支払うために、家のスペースにエアマットレスを置き、貸し出すことを思いつきました。
そして、貸し出すためにウェブサイトを作り、宿泊と朝食の提供をメインにしたサービスを開始しました。当初のサービス名はAirbedandbreakfast(ベッドと朝食)であり、現在のAirbnbはこれに由来しています。
しかしながら朝食を提供するというのが思ったより大変でホストからの人気がなく、ホストを増加させるのに歯止めをかけました。ユーザーからのヒアリングを徹底的に行うことで、朝食を止めて現在のビジネスモデルへと移行しました。
Slackとは
Slackとは「仕事場にあるすべてのツールを1つのプラットフォームに統合する」ということを目的とした、仕事用SNSです。チャット・グループ作成・過去ログの検索・通話等が可能です。日本で馴染みのあるサービスに例えると仕事専用のLINEをイメージするとわかりやすいでしょう。
デザイン性とUIに優れ、多くのシステム開発者から火がつきました。現在では開発者のみならずサンフランシスコ/シリコンバレーの企業を中心に使われており、デイリーアクティブユーザーは230万人を超える程になっています。
Slackのビジネスモデルとは
Slackのビジネスモデルは非常にシンプルです。基本的なツール使用するだけであればどれだけ使っても全く使用料がかかりません。しかしながら一部の機能を使うために使用料を支払う必要があります。
ユーザーの多くは無料でSlackを使い始め、より多くの機能を使いたいということでサブスクリプションを始める人が大半です。価格設定は無料・700円・1300円/人となっています。
Slackを有料で使うことのメリット
- 外部パートナーとプライベートチャネルの開設が可能
- 過去ログ検索が無制限(無料版だと10,000メッセージまで)
- プロフィールの編集が可能
Slackの創設期
Slackの創設者であるStewart Butterfieldは元々写真シェアウェブサイトのFlickrの創業者でした。そしてTiny Speckというオンラインゲーム会社を創設し、その際にGlitchというゲームの開発に注力していました。
彼らは4年ほどオンラインゲームに挑戦しましたが、Glitchのメンバーは次第にゲームに興味をなくしIRC(インターネット・リレー・チャット)に興味を持ち始めるようになりました。なぜなら開発チームのメンバーはIRCを利用することによって不要なemailを気にせず重要なプロジェクトに集中できるようになったからです。
そこに可能性を感じたGlitchが事業を完全にコミュニケーションツールへと集中させるようになるまでには長く時間はかかりませんでした。そして2012年の末にサービスを開始し2013年の8月に試作品が提供されました。
まとめ
この2社やサンフランシスコ/シリコンバレーの最近のビジネスモデルの流行としては課金型プラットフォームとサブスクリプションモデルの2つのモデルが主流になってきています。「ユーザーが必要な時に必要なだけお金を支払う」という無駄のなさがユーザーにも気に入られるサービスを作ることにつながっています。
また主流だからと言ってビジネスに固執するのではなく、時には大胆にビジネスの転換を行っていることも挙げられます。転換期の際に考慮されているのは主に以下の2点です。
- ユーザーベース:Airbnbのように朝食にニーズがあまりないことを発見し、ユーザー目線でプロダクトの転換を測るケース
- プロダクトベース:Slackのように自分たちで使用して、ニーズを先読みし、プロダクトの開発まで至るケース
どんなに良いプロダクトを作り上げても1度で大成功するというケースはあまり見られません。時代やニーズに合わせて柔軟な転換がこれからの時代には求められるのではないでしょうか。
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