シリコンバレーテクノロジー 2019.04.28

Google NEXT 2019:Google Cloud Platform注目の理由

こんにちは、Nissho Electronics USAの小松です。

4月9日から11日の3日間、米国カリフォルニア州サンフランシスコにてGoogle Next 2019が開催されました。

今年で開催4回目となる同イベントは、Google Cloud Platform(以下GCP)サービスの最新機能アップデートやユーザ事例発表等を中心とした、Google主催の年次カンファレンスです。

イベント開催中はサンフランシスコのMoscone Center周辺がGoogle一色でした。

今回初めて参加し、現地で感じたGCPサービスの勢いや同サービスに注目すべき理由を3つの観点でレポートしたいと思います。

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1. サービス成長率や顧客評価の高さ

Google Nextに初参加してまずはじめに感じたのは、サービス成長率や顧客評価が非常に高いということです。それは、Googleの経営幹部が登壇するキーノートセッションでのクライアントやビジネスパートナーによる登壇の長さや内容からも感じとれました。

その長さは、以前「AWS re:Invent 2018:クラウドマネジメント注目の理由」でもお伝えしたアマゾンウェブサービス(以下AWS)の年次カンファレンスであるRe:Inventと比較すると良く分かります。AWSはそのリリース機能の多さも影響し、キーノートセッションでは2時間ひたすら新機能の発表に割り当てる、そんなイメージでした。

一方、Google Nextは少し異なり、重要な新機能は勿論盛り込みつつ、より顧客やビジネスパートナーの登壇を重要視していたように感じました。クラウドサービスとしては、後発であるが故に顧客獲得への焦りもありながらの計らいかもしれませんが、クライアント企業やビジネスパートナーの成功体験や実体験をメインコンテンツとしてとりあげることで十分にアピールできていたように思います。

(各業界のトップ10企業の半数以上が既にGCPを採用しており、Googleの勢いを感じる。)

このような顧客主導型の考え方は評価の高さにも直結しますし、さらにその先のサービス成長率にも影響すると考えられます。実際、CB Insightsによると、GCPの売上は現在AWS、Azureに続き第三位に位置していますが、成長率はAWSの約2倍であり、顧客満足度は3社の中で一番という結果も出ています。

ところで今回はGoogle Cloud新CEOのThomas Krian初登壇のGoogle Nextでもありましたので、Google Cloud自体のセッションをもう少し優先してもいいのでは?とも感じたので。

(顧客満足度調査によるGCP評価の高さを示している。CB Insightsより転載)

2. オープンイノベーションを重視したマルチクラウドサービスを開発

オンプレミスからプライベートクラウドへ、プライベートクラウドからハイブリッドクラウドへ、ハイブリッドクラウドからマルチクラウドへという考え方は今となっては誰もが合点がいく考え方ではないでしょうか。勿論、顧客によってどのフェーズに位置するかはそれぞれだと思いますが、遅かれ早かれこの考え方は業界問わず浸透していくものと考えています。

今回のGoogle Nextにおける一番の発表は「Anthos」という新サービスでした。

これは、Google Next 2018で発表された「Cloud Service Platform」をベースとし、一般提供開始に伴い名称変更したもの。コンテナ化されたアプリケーションをオンプレミス、GCP、Azure、AWS等、いかなるインフラ環境においても、何の変更も加えずに利用、移行、管理が出来るサービスです。つまり、マルチクラウドを実現するための重要なサービスなのです。

現時点では一部インフラ環境を限定している部分も見られますが、アプリケーション基盤が仮想マシンからコンテナ、コンテナからサーバレス、Function as a Serviceという考え方へ形を変えていくにつれ、益々インフラ環境を意識することが必要で無くなります。

そうなった際に、環境依存のサービスやアプリケーションでは新サービスの開発スピードも連携も、サービスリリースに至るまで全てが後手後手にまわります。それをAnthosにより回避できるのです。

(マルチクラウド実現ツール「Anthos」を発表するGoogle Cloud 新CEOのThomas Krian)

Googleのすごいところは、オープン思考がぶれないところです。コンテナオーケストレーションのKubernetes、サービスメッシュのIstio、サーバーレスのKnativeに至るまで全てオープンソースで開発され、誰もが利用できる状態で提供されます。それをたとえ他者との競争をうむことになっても公開し続けているのです。

「Anthos」は、先行組であるAWSやAzureパブリッククラウドサービス利用がある程度企業で浸透してきた今だからこそ必要なサービスだと感じました。

3. 新たなテクノロジーコンセプトを積極採用する姿勢

今回、個人的に共感したGCPのコンセプトに「Zero Trust」モデルを取り入れようというセキュリティの考え方がありました。

「Zero Trust」の考え方自体は以前よりありましたが、ここ最近クラウド業界では1つのトレンドとして再燃しているように感じます。

(セキュリティ含め積極投資する。Google Cloud SVP Technical InfrastrucutureのUrs Holzle)

これはその名前の通り、信頼がゼロということを意味します。これは、オンプレミス、クラウド上を含めインフラ上に存在するインタフェースやユーザ、アプリケーション、パケットに至るまでの全てのものを信頼しないという考え方のもとで、セキュリティ対策を施すということです。

つまり従来のFirewallやACL等、ネットワークベースのセキュリティ対策ではなく、IDやパスワードのようなID認証を全ての通信に付与(例えばタグのようなもの)し、全ての通信を暗号化するという考え方へシフトするということです。

クラウド利用以前の環境であれば、Firewall設定においてもこのIPアドレス通信を許可するとか、このポート番号を許可するというようなセキュリティルール設定は当たり前でしたが、サービス基盤がコンテナになり、さらにマルチクラウドでコンテナ自身がダイナミックに複数のクラウドを行ったり来たりするとなると従来の対策では追いきれません。

その点、「Zero Trust」の考え方に基づくID認証、暗号化であれば、全てを信頼しないためインフラには依存しないセキュリティ対策が取れるというわけです。従来のネットワークベースのセキュリティから飛躍する部分もありますが、クラウドセキュリティにおける「Zero Trust」モデルは、理にかなった新たなコンセプトだと感じました。その新たなコンセプトを採用する積極的な姿勢は、他パブリッククラウドサービスよりテクノロジーで先行しようというGCPの強い思いがあるように思います。

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まとめ:時代にあった提案モデルを目指していきたい

AWSのRe:Inventしかり、今回初参加のGoogle Nextしかり、クラウドサービス事業者が主催する主要イベントに参加すると毎回思うのは、システムインテグレータとしての役割を再認識する必要があるということです。

GCPのサービスからもわかる通り、従来我々のようなシステムインテグレータが提供していたプロダクト(機能によるサービス含む)+サポートを、クラウドサービス事業者が纏めてサービスとして提供するようになってきました。このことは、顧客観点からすると便利である一方で、我々のビジネスにとってはやはり脅威であるということです。

そのため、そんな中でもそのようなサービスと共存し、従来モデルではなく、例えば、コンサルティングや運用等、お客様の期待にこたえるべく提案モデルに変化を加え、包括的なサービスの提案が求められるように思います。

クラウドが当たり前になり、テクノロジーの開発や起業が簡単になり、よりスピーディにお客様の価値を最大限に高められるそのようなサービス、正解を見つけるにはまだ時間がかかりそうですが、とことん追求していきたいと思います。

日商エレクトロニクスでは、オンプレミスからクラウドへの移行支援やクラウド移行後の効果を最大限にいかし、お客様のデジタルトランスフォーメーションを実現するための様々なサービスをご用意しております。是非お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

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Nobuyuki Komatsu

2004年、日商エレクトロニクス入社。JuniperやBrocade、Viptelaなどネットワークを軸としたインフラ製品の事業推進や新規ベンダー立ち上げに関与。2017年10月よりサンノゼ赴任。シリコンバレーで得られる最新の情報を発信しつつ、新たなビジネスモデル開発に向け日々奮闘中。2020年現在の担当領域は、クラウドやフィンテック、インシュアテックなど。バスケットボールとキャンプが趣味。

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