フィンテックという言葉がバズワードになって久しくなってきました。フィンテックには様々な分野が含まれており、その中でも最近特に注目されている分野が保険です。保険(インシュアランス)とテクノロジーの言葉を組み合わせて、インシュアテックとも呼ばれています。 保険業界は規制が厳しく、新たなプレイヤーを参入させたがらない傾向にあるため、テクノロジー導入の観点から言うと他の業界に遅れをとっている状況下にありました。
また、保険会社は「サービス内容が複雑化している」「金額を安くすることができない」「窓口の対応が遅い」といった問題を抱えているため、利用者にとって保険の購入や手続きの作業はとっつきにくく、できれば避けたい厄介なタスクというイメージが根強いのではないでしょうか。
注目を浴びる「保険xテック」の最新動向
しかし、インシュアテック業界への投資は2015年頃から増え始め、AXAやAIGのような有名保険企業も積極的に関連スタートアップやテクノロジーに投資をしています。また、InsureTechConnectのようなカンファレンスイベントに1000人以上の企業幹部が参加を予定していたりと、インシュアテックが盛り上がりを見せているのは間違いありません。
時代が変化するにつれて姿を消さざるを得ない業界も存在しますが、人間が生きている限り保険は必要とされ続けるのではないでしょうか。だからこそ保険とテクノロジーの融合は大きな注目を集めているのかもしれません。
今回は、規制が厳しくディスラプトしづらいと思われがちな保険業界をパーソナライゼーションを意識したサービスづくりで大きく変えつつある米国発のスタートアップを3社ご紹介します。
パーソナライゼーションを意識した最新インシュアテックスタートアップ3選
1. Oscar:インタラクティブでパーソナルな新しい健康保険
Oscarは、すべてスマートフォンアプリで完結する新しい健康保険で、利用者の使いやすさと安心感をとことん追求しています。そもそも、Oscarのミッションは、新たなテクノロジーやデザインによって、利用しにくいヘルスケアシステムをあるべき姿に作り変えること。利用者がこれまで必要としていた医師との円滑なコミュニケーションやシンプルかつ安心できる払い戻し手続きのシステムを実現しています。
まず、医師との円滑なコミュニケーションに関して、保険加入者はアプリの画面から2タップするだけで、医師に直接電話相談(24時間365日可能)をすることができ、テキストメッセージや写真を使って自宅にいながら医師による簡単な診断を受けることが可能です。また、自分の症状にあった医師の検索や従来通りの対面での診察予約も、アプリで簡単に行えるようにデザインされています。
また、払い戻しや手続きに関してもアプリ上での処理が可能で、何か問題があれば担当のカスタマーサポートチームが電話やテキストメッセージで対応してくれます。Oscarのアプリを使うと、同一の医師やカスタマーサポート担当者とコミュニケーションをすることになるので、利用者は自分だけに向けた対応を経験することができ、多数の人たちと関わるという手間がかからない上に安心感を得ることができます。
2. Trov:必要なときだけ使えるオンデマンド型の損害保険
Trovもスマートフォンアプリで全て完結するオンデマンドの損害保険です。Trovの最大の特徴は、利用者が必要なときにだけ、必要だと感じる掛け金を、必要な品物にだけ保険をかけられるということ。例えば、カメラを持って日帰り旅行に行く場合、旅行中だけカメラに保険をかけることが出来ます。
アプリの使い方は、自転車やパソコン、楽器など、保険を掛けたいと思う品物をアプリ内にリストアップしておき、保険をかけたいときだけオンオフのスイッチを切り替えるという非常にシンプルな仕組みです。また、かけたい金額の設定もカーソル移動に合わせてカバーしてくれる金額も表示されるため、とてもわかりやすいインターフェースになっています。
なお、もしも保険をかけていた品物が壊れたり盗まれたりした場合は、保険の払い戻しもアプリ内のテキストメッセージでスムーズに行うことが出来ます。Trovは、多種多様な生活スタイルや価値観に対応した新しいカタチの保険と言えるでしょう。
(Trovの使い方動画はこちら)
3. Gabi: より適した保険をリアルタイムに伝える保険ガイド
Gabiは、利用者にとって最適な保険を見つけ、別の保険への切り替えをサポートする保険ガイドを行うスタートアップです。Gabiは現在、車と住宅の保険に対応しており、上記の2社と同様にアプリで全ての操作が可能です。
保険の検討や乗り換えは、それぞれのプランを調べて理解を深めることが必要なので時間や労力がかかってしまいます。そのため、「掛け金を下げたい」と思っても、格下のプランに変更することでしか金額を下げることはできませんでした。しかし、保険利用者らが抱えるそのような問題をGaviはビッグデータとAIを利用して解決しようとしています。
まずGabiが提供するのが、主要保険会社の比較検討サービス。利用者自身の保険に対するポリシーや現時点で加入している保険プランのデータを基に、20社以上の保険会社の比較が簡単にできます。まさに保険界のSkyscannerやExpediaとも言えそうです。
また現時点で新規の保険加入を検討していない場合でも、それらのデータを登録しておくだけで、それより条件の良い保険プランが市場に出るとアプリを介して通知が届き、テキストメッセージ上で保険の乗り換えをサポートしてくれます。Gabiのウェブサイトによれば、保険のグレードを落とさずに利用者平均$460の節約に貢献にしているとあります。ちなみにGabiは斡旋業者ではないので、セールスなどはなく費用も無料とのこと。
できるだけお金は有効活用したいと考える利用者の立場に立ち、さらに利用者それぞれの趣向に合わせてより良い保険をお知らせしてくれる、まさにユーザーセンタードなインシュアテック企業と言えそうです。
保険業界に革命の波
以上の3社は、どれもスマートフォンアプリを用いており、これまでスピードが遅かったり複雑でわかりにくかった保険業界において、リアルタイム性とペーパーレス化を実現し、スピーディで明快なサービスを利用者に提供しています。さらに個人個人の価値観や生活スタイルに合うように、個人のデータを設定したり、必要に応じてサービス利用の期間や内容を選択したりことで、利用者はパーソナライズされた保険サービスを体験することができています。
これまで保険サービスにおいて、まさに利用者が感じていた「複雑でわかりにくい」「価格が安くならない」「窓口の対応スピードが遅い」といった問題を解決するこの3社は、新たなサービス形態を提供していると言えます。保険業界は規制が厳しく新しいものを導入しづらい傾向にあると考えられていますが、ユーザーに寄り添ったサービスを提供するスタートアップは他にも次々と登場しています。
インシュアテック業界の傾向を学ぶことは、保険業界だけでなく、様々なコンシューマー事業にとって重要です。保険はどんな業界にも関連してくるテーマなので、今後のサービス展開の参考にもなるでしょう。そして、それらの事業とのコラボレーションを検討することで今まで実現できなかったことができるかもしれません。今後のインシュアテックの動向から目が離せません。
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