今後、爆発的な普及が予想されるInternet of Things(IoT)。調査会社によって数値はまちまちですが、おおよそ2015年から2020年の5年間でIoTデバイスの数は5倍の250億台程度になると予想されています。ここシリコンバレーでは、多くの大企業、スタートアップがIoTに取り組んでいます。
IoTというと、スマートウォッチやコネクティッドカー、スマートホームなどを想像しがちですが、それだけにとどまりません。Ciscoが、すべてがインターネットにつながるという、IoTのその先の「Internet of Everything(IoE)」という概念を提唱しているように、身の回りや工場など、あらゆるものがインターネットにつながる世界が近づいています。
デバイスでいうと、スマートフォン、PC、自動車、空調設備、ウェアラブルデバイス、自動販売機、さらには人体に埋め込まれた治療用のデバイスなどが、無数のデータを生み出していきます。
また、産業で言えば、工場や輸送などはもちろん、農業や漁業などのこれまでITとは無縁と考えられていた分野までIoTの利用が進んでいきます。このように、非常に種類の多いデバイスから、様々な形態のデータが生み出されることになります。
これまでに生み出されるデータの多く(PCやスマホ、企業のITシステムから生み出されるデータ)は、人間がコンピュータを操作したり、何らかのアクションを起こすことで生まれるものがほとんどでした。例えば、Googleで検索した時には、どこから、誰が、どんなキーワードで、いつ検索したかのログが残り、そのデータを利用することで検索キーワードの提案や、広告のターゲティングなどに利用されています。
しかし、IoTには電源を入れておくだけでセンサーがデータを収集・送信し続けるものが多くあります。大量の様々な種類のデータが高速で生み出され、そのデータを活用するためにリアルタイム処理が求められるものも多くあります。
IoTから生み出す膨大なデータのリアルタイム処理は、データセンターの負荷を増大させ、新しいセキュリティやキャパシティ、解析面での挑戦が必要になります。
今回の記事では、IoTの普及によりデータセンターに訪れつつある3つの変革を紹介します。
変革1. 集中型から分散型へ
IoTが普及すると、何百万、何千万という膨大なデバイスが、10秒毎や毎秒のような非常に短い間隔でデータを送信してきます。そのデータは、センサデータなどの非常に小さいデータが多いのが特長です。これまでデータセンターが扱ってきたデータとは、量とスピードはもちろん、データの性質も変わってきます。
世界の各地から生み出されるデータをすべて1つのデータセンターに集めて処理することは、技術的にも経済的にも現実的ではありません。このため、分散した複数の小規模データセンターを設置して、初期処理をリアルタイムに行い、その後に適切なデータをハブとなるデータセンターに送るような構造のモデルが現実的となります。
また、IoTが生み出すデータに対応するため、データセンター内も変化する必要があります。例えばデータベースでは、これまで主流であったリレーショナルデータベース(RDB)ではなく、NoSQL(Not Only SQL)が注目されています。NoSQLは、RDBよりもスケールアウトしやすいため大量のデータの保存に向いており、データの書き込みもより高速であるため、IoTが高速に生み出すデータの処理に向いています。
また、IoTは様々なデバイスから様々なタイプのデータが送り込まれますが、NoSQLはスキーマレスであるため、このようなデータの保存に向いています。このように、データセンターのハード・ソフト両面での変化が必要になっています。
変革2. セキュリティリスクの増大が大きな問題に
IoTが普及することは、あらゆるプライバシーの情報がインターネット上に蓄積されることを意味しています。例えば、家庭の電力消費量を計測するスマートメーターによって電気の使用状況のデータが、スマートロックによっていつ家に帰宅したか、コネクティッドカーにより自動車の利用状況のデータがというように、例を挙げていけばきりがありません。
企業でもこの問題は同じで、企業でのIoT活用が進むということは、企業活動における多くのデータがインターネット上に蓄積されることを意味しています。
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また、あらゆる場所にインターネットにつながったデバイスが登場することで、それだけ悪意のある攻撃者が侵入できる場所が多くなることを意味しています。このような背景から、セキュリティの問題はより大きくなると予想されます。データセンターも含めたシステム全体としてうまく対応していく必要があるのです。
変革3. データセンター自体の管理も変わる
IoTを活用して、効率化する取り組みは今後あらゆる産業、場所で広がっていきます。データセンターも例外ではなく、データセンター内の効率化をIoTを用いて行う動きが進んでいます。
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データセンターで多くの使用電力を占めるのは空調です。サーバーは高温や低温、多湿や乾燥などに弱く、気温と湿度を一定に保つ必要があるので、データセンターでは空調機器に多くの電力が利用されています。サーバーは処理を行うことで熱を発しますが、常に一定量の熱を発し続けるわけではなく、処理の負荷が高くなった時には発熱量も増加します。多数の熱源で埋め尽くされるデータセンター内部は温度のムラがあり、全体をただ均一に冷却しようとすると非効率になります。
このため、ラックに温度計や湿度計、圧力計を取り付けることで、データセンター内の温度、湿度、気流をリアルタイムに把握することができます。これらのデータを、人工知能を用いて分析することにより、効率的な空調を実現することでコストを下げることができます。
また、データ管理についてもソフトウェアで行う動きもあります。データセンターで消費される電力は負荷によって大きく変動します。多くのデータを処理するためには、IT機器が消費する電力が大きくなりますし、同時により多くの熱を発するため、空調に必要な電力も大きくなります。
そこで、例えばバッテリー付きの電力管理デバイスをそれぞれのラックに配置し、各ラックの電力をリアルタイムで監視することを考えてみましょう。電力消費が少ない時にバッテリーに電力を蓄えておき、電力消費が大きい時にバッテリーからも電力を供給することで、電力消費のピークを抑えることができます。
これにより、電力設備のコスト削減や、より効率な電力の利用が可能になります。もちろん、停電時にもバッテリーから電力を供給できるようになるメリットもあります。
このような、センサーにより状態をリアルタイムに監視し、そのデータを解析することで効率化するIoTの動きは、データセンターにも積極的に取り入れられていくと考えられます。
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Nissho Electronics USAの取り組み
IoTの普及により、生成されるデータの量が爆発的に増加し、また生成されるデータのタイプもこれまでとは違うタイプのものが増えてきます。
このような大きな環境の変化によって、データセンターも進化することが求められています。
Nissho Electronics USAは、来るべきデジタルビジネス時代に備え、様々な観点からシリコンバレーで調査を行っており、日商エレクトロニクスと連携し、お客様に対し最適な提案をしてまいります。お問い合わせフォームより、どうぞお気軽にお問い合わせください。