2025年3月3日~6日にスペイン・バルセロナでMobile Word Congress2025が開催されました。本イベントでは、各国の通信事業者、クラウド事業者や関連メーカーなどさまざまな業種から104,000名以上が集まりました。
特に目を引いたのは、ネットワーク自律化、AI活用の部分でした。今回にイベントに向けて、さまざまなプレスリリースがなされており、新製品やパートナーシップについて発表がされました。
注目のプレスリリース
MWC2025に合わせ、多くの企業が新製品やパートナーシップを発表しました。ドイツテレコムはGoogle Cloudと提携し、RAN運用に関連するAIエージェントの開発を共に行うと発表。Google CloudのVertex AIのGemini 2.0を用いて構築されたこのエージェントは、ネットワークの動作やパフォーマンスを分析し、必要な修正アクションを自律的に実行します。通信ネットワークの複雑化が通信事業者の課題となり、従来のルールベース自動化ではリアルタイム問題に対応できません。プログラムは「RAN Guardian エージェント」と呼ばれ、人間と同様のプロセスで異常を検出し、自己修復アクションを実行します。
次に、HPE Aruba Networkingの新スイッチCX 8325Pについてです。従来は衛星やPTPによる時刻同期が主流でしたが、この新スイッチはナノ秒単位の精度で同期可能です。高精度タイミング機能により、スタジアムなど大規模会場でのスムーズな5Gローミング体験が提供され、AIアプリ、放送、クラウド無線アクセスネットワークの展開にも役立ちます。
最後に、AgenticAIについてです。NOKIAはネットワーク自律化のポートフォリオに、新たなAgentic AI機能を追加しました。通信事業者向けに最適化されたLLMとAgentic AIを活用した早期脅威検出や対処機能により、脅威除去の時間が数日から数分に短縮され、手作業が削減されます。また、生成AIを用いた加入者体験の分析では、エンジニアが自然言語でデータにアクセスし、専門スキルなしで迅速に洞察を得ることが可能です。さらに、AIスタジオを通じて独自のAIユースケースを短期間で構築し、AIエージェントがタスク自動化や障害予測を行うことで、運用効率と顧客体験を向上させます。
注目キーノート
1. ヨーロッパの現状
ヨーロッパの主要通信事業者4社(Vodafone、テレフォニカ、ドイツテレコム、オレンジ)のCEOによるパネルディスカッションが行われました。ヨーロッパでは、5G、海底ケーブル、衛星、そしてセキュリティの領域において、年間200億ユーロ(約2.8兆円)を投資しています。しかしながら、ヨーロッパの過度な規制が原因となり、通信事業者分野におけるヨーロッパの存在感は弱まりつつあります。
こうした状況を打破するため、各社は積極的にイノベーションに取り組んでいます。しかし、AIについてもヨーロッパに主要なLLMがあるわけではなく、大きな存在感を示せていません。一方、ヨーロッパの事業者は、ネットワークエッジでのAI活用やネットワークスライシングを「キラーアプリ」として活用することで、AI領域での存在感を高める可能性を模索しています。
その他、米国と比較してヨーロッパでは資金が集まりにくいことや、1つの国に通信事業者が複数存在し、過剰な競争が行われていることも議論されました。10年前にイギリスで起こったBTとEEの統合は、投資効率の向上の好例となっており、現在でも通信事業者の統廃合は積極的に行われています。
2. AIが与える社会への影響
このセッションでは、未来学者も交えて、AGIとAIの将来について議論されました。1999年の予測では2029年までに人間レベルの知能に達するとされ、現在の傾向からもその可能性が示唆されています。これらの変化は常に劇的であり、例えば、ModernaはAIツールでCOVIDワクチンを数日で開発し、DeepMindのAlphaFoldは2022年に2億ものタンパク質構造を解析しました。
交通分野では自動運転技術が進展し、現在米国で発生している約40,000人の死亡事故が大幅に減少します。エネルギー分野ではAI最適化設計で太陽エネルギーが市場を支配する可能性が指摘されました。また、2030年代には人間の脳がクラウドに直接接続し、生物学的知能とAIが融合することで、人間の能力が飛躍的に向上すると予測されています。
一方、AIの幻覚やディープフェイクの問題は改善傾向にあるものの、依然として発生しており、全体の信頼性は向上しているものの課題が残ります。また、AIのエネルギー需要増加に対して、低エネルギー技術の導入などで今後数年で解決される見込みです。
3. テクノロジーのゲームチェンジャー
Agility Roboticsは、GoogleのGeminiを活用する『Digit』というヒューマノイドロボットを開発中です。現在は16kgの物体を持ち上げられ、将来的には25kgまで可能にすることを目指しています。特に、アメリカの人手不足対策として、倉庫などで人と協働する用途に重点が置かれています。
Lenovoは、パーソナルAI搭載デバイスの開発に加え、世界初のロール型ARディスプレイや折りたたみディスプレイなど、革新的な製品を発表しました。また、デバイス間で個人データを安全に同期させる高度なAIエージェント『Lenovo AI Now』にも取り組んでいます。
Databricksは、AIモデルのトレーニングとサービングにかかるコストが年々約75%低下するという、ムーアの法則を上回る改善を実現し、データスタックの近代化を推進しています。さらに、リアルタイムでコードのエラーを診断・修正するツールなど、ユーザーインターフェースの革新にも力を入れています。
Mistral AIは、欧州の先進的なAI企業として大規模言語モデルや基盤技術を開発し、フランスのOrangeなど通信企業と連携。これにより、ネットワークのパーソナライゼーションや予知保全など、高度なAIソリューションのブレイクスルーを目指しています。
Huaweiは、インテリジェントキャンパスやデータセンターをテーマに、公共、教育、金融、電力など各産業向けの10の主要ソリューションと実際の導入事例を強調しました。SK Telecomは、60,000GPU・100MWの電力供給を誇る韓国最大規模のハイパースケールAIデータセンターを発表し、GPUaaSやモジュラーセンターなど多様なビジネスモデルを展開予定です。Shaomiは、スマホにレンズを装着することで一眼レフ並みの撮影性能や車との接続機能を実現するガジェットを展示し注目を集めました。
Lenovoは、昨年の透過型ディスプレイに対し、今年は折りたたみディスプレイやラップトップ背面にソーラーパネルを組み込んだ製品を展示し、個人データを安全に同期する『Lenovo AI Now』の開発にも注力しています。HPEは、液冷式で512プロセッサ搭載可能なスーパーコンピューターHPE Cray EX4000を展示し、エクサスケールクラスの高性能コンピューティングを実現しています。
ドイツテレコムは、Wi FiセンシングやAI駆動型セキュリティを紹介するとともに、T Mobileと共同で開発したマゼンタAIを搭載し、2025年後半発売予定の新型AIフォンの機能(アプリレスでカレンダー管理や予約業務を自動化)を発表しました。Vodafoneは、スポーツチーム向けに選手パフォーマンス分析ツール「PLAYER CONNECT」を提案し、データ活用でチームの効率向上を狙っています。テレフォニカは、オープンゲートウェイAPIを活用した事業者間連携の自律型ドローンや、海底ケーブル点検を支援するポスト量子暗号技術などを展示しました。Orangeは、インダストリ4.0、災害現場、スマートホーム、デジタルツインなど、データを有効活用するためのインテリジェンス関連技術を紹介しました。
日本では、ドコモがNTNやHAPSを利用した航空宇宙関連サービス、今年夏発売予定のVRグラスを展示。楽天は、完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワーク構築、Open RAN、大規模ネットワーク自動化など「インテリジェントな成長」をテーマに発表し、KDDIは、コンビニ機能を持つ自律運転車やAIによる商品補充、接客システムなどリテール分野に焦点を当てた技術を展示しました。
注目スタートアップ
Microamp(5Gミリ波ネットワークの無線インフラ)
プライベート5G向けにミリ波無線インフラを提供します。主力製品「5G ミリ波 Radio Units」は28GHzおよび26GHz帯で高スループット・低遅延を実現。コンパクトで低消費電力な設計が特徴で、特に高帯域を必要とするビデオ通信などでヨーロッパ企業への導入が進んでいます。
OneLayer(5Gネットワークのセキュリティ)
公共や製造業向けのプライベート5Gネットワークのセキュリティ(ゼロトラスト)を提供する製品です。SIM認証だけでなく、デバイスを個別に識別し、認可された機器のみ接続可能な仕組みや、エージェントレスでIoTにも対応することで、サプライチェーン全体の安全性を高めています。
Sitehop(強力な暗号化アプライアンス ‐ ポスト量子暗号)
ポスト量子暗号技術を採用したハードウェアベースの暗号化アプライアンスを提供します。超高速・超低遅延でサブナノ秒レベルの暗号化・復号を実現し、従来製品に比べシンプルかつ高性能。大手銀行や通信事業者に採用され、インターネットのバックホール環境の安全性向上に貢献しています。
Multiverse Computing(量子コンピューティング技術でビジネス課題を解決)
主力製品「Singularity」は、量子アルゴリズムを模倣した量子インスパイアード技術を提供。通常のPCで複雑な計算を実行可能にし、金融、エネルギー、製造、物流などの最適化やリスク管理を支援。さらに、量子暗号やAIを活用したデータ分析ソリューションも展開しています。
CTHINGS.CO(IoTセンサー+ネットワーク)
工場ラインや従業員に装着するIoTセンサーで騒音、温度、加速度などのデータを収集し、メッシュネットワークで統合管理するソリューションを提供します。Wi‑Fi、Bluetooth、ZigBeeに加え、プライベート5GやLTEも利用可能。Linuxベースのエッジデバイスと「Orchestra」ソフトウェアで遠隔管理やAI分析を実現しています。
GreySkies(通信事業者向けAIOps)
通信事業者向けにAIを活用したサービスアシュアランスプラットフォームを提供。各種ネットワークデバイスからデータを収集し、統合ダッシュボードでリアルタイム監視を実現。機械学習でイベントを検知・統合し、自動化された対処シナリオで運用効率向上を図り、オンプレミス導入も可能です。
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