米国イノベーティブカンパニー 2023.02.21

ニューヨークで見た店舗の新たな価値<後編> 体験創出とパーソナライズ化

こんにちは、Nissho Electronics USA の門馬です。
ニューヨークで見た店舗の新たな価値<前編> NFT、Eコマース、サステナビリティでは、NFTやWeb3を体験できるSOLANA、小規模ブランドの交流の場を提供するShopify、サステナビリティの取り組みを実感できるMANGOの店舗を紹介しました。後編では、店舗でさまざまな体験を創出するCAMP、そしてパーソナライズ化に力を入れるM&M’SとLEGOを紹介します。

1. CAMP

CAMPはA Family Experience Companyを掲げる玩具店で、私が訪問したのはコロンバスサークル近くのショッピングセンター内にある店舗です。店内はおもちゃの販売と遊び場を組み合わせた構成になっており、実際に遊んだおもちゃを購入することができます。また遊び場はよくある子ども向けではなく大人も一緒に遊べて「家族の体験」を楽しめる場となっていました。

特に興味深いのがイベントの開催です。CAMPの店舗では様々な企業とコラボレーションして、子どもと大人が一緒に学べる体験イベントを用意しています。昨年はH&Mとコラボし、持ち込んだ衣服を大人と子どもが一緒に加工して再利用できるイベントが開催されたようです。またディズニーとのコラボでは、まるでディズニーランドのアトラクションに来たかのような没入型の体験ができるイベントが催されました。

The Style Cabin(CISION PR Newswireウェブサイトより引用)

2. M&M’S

タイムズスクエア近くのM&M’S Worldでは、パーソナライズしたチョコレートを作ることができます。15色の中から色を選択し、画像やメッセージを選択(あるいはカスタム入力)すると、それらがプリントされたM&M’Sが機械から出くるという仕組みです。

M&M’Sでは、2012年からこうしたパーソナライズしたチョコレートを提供しており、多くのメディアで取り上げられてきました。現在はアメリカ以外でもこうしたコンセプト店舗を展開しており、どの国でも話題を集めています。

3. LEGO

5番街にあるLEGOショップは、多くの方に勧められて訪れた店舗です。実際に行ってみたところ、店内はさまざまなパーソナライズ化の工夫にあふれていました。

その1つが、オリジナルのミニフィギアの作成です。まずミニフィギュアを購入し、設置された端末で自分の名前を入力します。次に、顔、体、足のパーツについて好きなデザインを選択すると、店内に設置されたプリンターでフィギアに自分の名前や選んだデザインが印刷されます。これらすべての工程にかかる時間は10分ほどでした。

また印象に残ったのが「モザイクメーカー」です。この機械で写真をモザイク化してそれに合ったブロックを購入すれば、写真をブロックで再現できます。手順は簡単で、端末の前で写真を撮るだけ。値段は約130ドル(約18,000円)とちょっとお高めです。オンラインで写真をアップロードして購入することもできます。

ほかにも店内にはLEGOブロックで作られたQRコードがいくつも掲示されており、オンラインで説明を見ることができました。また店内で自分だけのレゴを作り、あとからオンラインで注文することも可能です。

さらに注目したのは、LEGO社のサステナビリティの取り組みです。LEGO社では使用済みのLEGOを集めて施設などの子どもに提供していますが、店内に回収ボックスを配置することでその取り組みをうまくアピールしていました。いらなくなったLEGOの発送もオンラインで申請することができます。

NisshoUSA注目ポイント

CAMPを訪問して驚いたのは、単におもちゃを体験させることをビジネスの中心にしていない点です。店舗からはCAMPのバリューは「体験の提供」であり、その企画力そのものがCAMPならではの価値にであることが伝わってきました。

M&M‘S とLEGOはどちらもパーソナライズの施策が充実していましたが、特にLEGOは店舗でできる体験をオンラインでも提供している点が素晴らしいと思いました。その一方で、オンラインとオフラインそれぞれの強みもうまく発揮しています。実際にWebサイトは優れたUXによって魅力的な商品に目が行っていましたが、店舗では「モザイクメーカー」が目立っていてオンラインでは見落としていた体験を楽しめました。LEGO社内では、優れたカスタマージャーニーを提供するために顧客からのフィードバックをリアルタイムで分析し行動に変えるツールを導入しているとのことですが、今回の店舗訪問でもその成果が表れていると実感しました。

また印象的だったのは、サステナビリティの取り組みに注目を集める仕掛けです。実際に私もLEGOで作られた回収ボックスを見て「これ、なんだろう?」と興味を持ち、同社の取り組みを知りました。このように注目や共感を集めて参画しやすい仕組みを作れば、ますますLEGOのファンを増やすことができます。この点は多くの企業が参考にできる点ではないでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。
Nissho USAは、シリコンバレーで35年以上にわたり活動し、米国での最新のDX事例の紹介や、斬新なスタートアップの発掘並びに日本企業とのマッチングサービスを提供しています。紹介した事例を詳しく知りたい方や、スタートアップ企業との協業をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

この記事を書いた人

Takashi Momma

2007年に日商エレクトロニクス(現 双日テックイノベーション)入社。Arbor Networks(現 Netscout)などネットワークおよびセキュリティ関連製品立ち上げ、事業推進を担当。2022年よりNissho USA(現 STech I USA)に赴任。当社が目指す「お客様との事業共創」を実現すべくシリコンバレーの最新情報の提供、オープンイノベーションをベースとしたビジネスモデル開発に向けて活動中。 趣味はサッカー。

この記事をシェアする

私たちと話しませんか?