シリコンバレーテクノロジー 2023.06.12

【ONUG2023 速報】 ITの新トレンド、NaaSとその注目企業3社

こんにちは、日商エレクトロニクスUSAの竹内です。2023年4月にアメリカに赴任しました。これから皆様に有益な情報をお届けして参ります。よろしくお願いします!

さっそくですが2023年5月17~18日にテキサス州ダラスで開催されたイベント「ONUG 2023 Spring」に参加しました。今回は、ONUGで特に大きく取り上げられたNaaSという新しいトレンドと、NaaSを提供する注目企業3社を紹介していきます。

ONUGとは?

ONUGはOpen Networking User Groupの略で、北米の大手エンタープライズ企業を中心に、ITベンダーやクラウド事業者、 サービスプロバイダなど合計17,000社で結成されたコミュニティです。今年で11年目を迎え、現在は主にクラウド、ネットワーク、セキュリティを中心に企業が抱える課題や要望の発信に加え、IT仕様の共通化に取り組んでいます。

現在の企業ITはPhase4の段階で、クラウドインフラをいかに最適化し運用するかが焦点です。インフラをクラウド化すると柔軟に拡張しやすくなるほか、コスト削減や運用効率の向上につながりますが、一方でプロビジョニングの自動化や適切なセキュリティ対策は十分ではありません。そうした課題解決に向けて、現在ONUGではPolicy as codeやゼロトラストに注目しています。

ONUGに参加する企業の時価総額の合計は$1.6T(約216兆円。2022年の韓国のGDPとほぼ同じ)、年間のIT支出額は$500B(約67.5兆円。日本の2022年の企業IT支出額27.2兆円の2倍以上*)というビッグスケールで、 ONUGがIT業界に大きな影響力を持っているのがわかります。

$1=135円計算
*Source: https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20230227

これからの新トレンドNaaSとは?

NaaS(Network as a Service)は、クラウド事業者が提供するネットワークのインフラストラクチャーを利用するサブスクリプション型のサービスです。 SaaSやIaaSなどと同じような「as a service」トレンドの1つです。

NaaSが注目された背景にあるのが、ハイブリッド・マルチクラウド化による通信環境の複雑化、リモートワークや外部クラウドサービスの活用による通信負荷の増大などの課題です。NaaSを導入すれば、企業は自前の設備を所有する必要がなくなり、ネットワークを柔軟に変更または拡張できるようになります。最近では、WAN/LAN、ネットワークセキュリティ、VPNなどさまざまな領域のサービスがどんどん出てきています。

NaaSを提供する注目ベンダー3選

ここからは、ONUGでの注目セッションに登場したNaaSベンダー3社を紹介します。

1. alkira

1社目はバックボーンネットワークの領域でNaaSを提供しているalkiraです。2018年にSD-WANの先駆けであるViptela社(現Cisco)を創業したKhan兄弟によって設立されました。

提供サービス

alkiraのサービスを利用すると、複数のクラウドやデーターセンターやオフィスにまたがるグローバルなネットワークの設計、導入、変更、管理を、直感的でわかりやすいユーザーインターフェースを通して簡単に行うことができます。

マルチクラウド、ハイブリッドクラウド、SaaS活用の増加などでネットワークの管理が複雑化していく企業や、拠点数が多いグローバル企業におすすめできるサービスです。

Alkiraのサービスが、自社の複数のオンプレミスサイトやリモートアクセス、パブリッククラウド、SaaSなどのハブになる。

イベントでは、alkira CEO Amir Kahn氏によるS&Pグローバルとの事例のセッションが特に盛り上がり、今後トレンドとして急上昇しそうな勢いを感じました。

左:alkira CEO Amir Kahn氏、右:S&Pグローバル Guruprasad Ramamoorthy氏

2. nile

2社目は企業のLANの領域でNaaSを提供するnileです。 同社はCiscoを現在の大企業に育て上げたカリスマ経営者のJohn Chambers氏および CiscoのChief Development OfficerだったPankaj Patel 氏(現nile CEO)によって2018年に設立されました。

提供サービス

nileは、有線、無線の企業内LANに関するハードウェア調達、設計、運用、保守、監視などのサービスをワンストップで提供します。ハードウェアやメンテナンスのサブスクリプションサービスは珍しくないなか、同社のサービスにはネットワークのプランニングや設計、構築、トラブルシューティングや最新ハードウェアへの定期交換も含まれている点が特徴です。

毎月の費用はユーザーの使用量に基づく従量課金で、無駄な費用が発生しないのもうれしい要素です。またネットワークの品質を保証しており、どこからでもネットワーク状況を確認できるポータルも提供しています。

LANに関するトータルコストを下げたい、手間を掛けずに安全で安定したネットワークを利用したい方におすすめです。

3. Valtix

最後はネットワークセキュリティの領域でNaaSを提供するValtixです。同社は2018年に設立されたスタートアップで、2023年2月にCiscoによる買収が発表されました。

提供サービス

Valtixが提供するのは、AWS、Azure、GCP、Oracle Cloudなどに対応するマルチクラウドのネットワーク環境において、セキュリティ設定を一括で制御・管理できるプラットフォームです。Cloud Firewall、IDS/IPS、Cloud WAFなどの高度なセキュリティ機能を備えているため、セキュリティ運用者はマルチクラウド環境でも各クラウド環境を熟知して管理する必要がなくなり、リソースを大幅に削減できます。NaaSなので物理、仮想アプライアンスの導入、管理、運用を行う必要はなく、状況に応じて柔軟に拡張することも可能です。

右からCigna VP Christopher Moretti氏、alkira CEO Amir Khan氏、Valtix CEO Vishal Jain氏、nile共同創業者 CPO Suresh Katukam氏

NisshoUSA注目ポイント

今回のカンファレンスは、5G、AI、ゼロトラストなどさまざまなテーマが扱われていましたが、どのセッションでもNaaSに注目されていたのがとても印象深かったです。 2015年11月に開催されたONUGでViptelaのGAP事例セッションをきっかけにSD-WANのトレンドが本格化したように、今回のカンファレンスがきっかけでNaaSトレンドが広まっていくような勢いを感じました。これからNaaSの盛り上がりを観測していきたいと思います!

過去3年間のGoogle検索トレンド推移(NaaS vs IaaS vs PaaS)。
青色のグラフがNaaS。これからトレンドが上昇することを期待したい。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。
Nissho USAは、シリコンバレーで35年以上にわたり活動し、米国での最新のDX事例の紹介や、斬新なスタートアップの発掘並びに日本企業とのマッチングサービスを提供しています。紹介した事例を詳しく知りたい方や、スタートアップ企業との協業をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

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Yuki Takeuchi

2011年に日商エレクトロニクス(現 双日テックイノベーション)入社。大手通信キャリア、OTT事業者向けの営業、Citrix製品の事業推進を経験したあと、ZoomやAsanaなどのエンタープライズ向けSaaSビジネスの事業開発、推進を担当。 2023年よりNissho USA(現 STech I USA)に赴任。ITを通して、日本企業の競争力や生産性が上げられるようなソリューションの発掘を目指して日々活動中。 担当領域は、ITインフラ全般、SaaS、Future of Work、Retail Techなど。 サーフィンや登山など体を動かすことが好き。

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