シリコンバレーテクノロジー 2024.06.28

【Webinar記録】SXSW2024から見える最新テックトレンド

本ウェビナーでは、SXSW2024(サウス バイ サウス ウエスト2024)に参加した米国駐在員、日商エレクトロニクスUSA・竹内が、当日のイベントやセッションの様子を紹介しました。

 

イベント概要

2024年3月、テクノロジー・スタートアップ関連の有名イベントSXSW2024(South by Southwest2024)が、アメリカ・テキサスで開催された。コンセプト段階の未来的なプロダクトの出展が多いことが特徴で、Twitter(現:X)やAirbnbが世界に広まるきっかけになったイベントとしても有名。若手ビジネスの登竜門とも言われています。

Key Findings

SXSW2024に参加して得られた気づきは、以下の3点です。

  1. AIを進化させる様々なテクノロジーが出現
    現在のAIをさらに進化させる、様々な手法やテクノロジーが登場。特にAIインフラでは、LLMを開発・運用・管理していくLLMOps領域が盛り上がっていた。
  2. AGI(汎用人工知能)の実現は近くまで来ている
    人間のような汎用的な知能を持つ人工知能・AGIは、2028年に実現する可能性がある。
  3. ライフサイエンス領域における進化も見逃せない
    今後数年で最もAIに影響を受ける領域として、注目されている。具体的は、新薬の開発スピードの向上やパードナライズドされた治療など。

注目セッション

SXSW2024で行われた1500以上のセッションの中から、注目されていた4つのセッションを紹介します。

セッション1:2024年の新しいテックトレンド(Future Today Institute社)

「AI、コネクテッドデバイス、バイオテクノロジーの三つのトレンドが相互に進化し、社会に革命的な変化をもたらしていく」と語られた。

  • AIが偏見や不公平を克服するには、時間がかかる。状況は1年前から変わらない。
  • AIは大規模言語モデルから大規模行動モデルへ進化。そのカギはコネクテッドデバイス。
  • AIのさらなる進化のために、オーガノイドを活用したバイオコンピューターが必要。

セッション2:AGI提唱者が語る AGIの今とこれから(Google DeepMind社)

AGIの現状や、AGI以外で注目するべき技術革新について紹介された。

  • AGIは2028年に実現する可能性があり、現在のAGIのレベルは成人の能力の90%ほど。
  • 完全なAGIを実現するには、新しいアーキテクチャの開発が必要。
  • タンパク質の形を予測するAlphaFoldをはじめ、AGI以外の技術革新も見逃せない。

セッション3:世界を変える10大技術(MIT Technology Review社)

未来の生活や働き方を変えるテクノロジーが10個紹介され、以下ではそのうちの3つを記載する。

  • チップレット
    従来の大規模なチップを、あえて複数の機能ごとのチップに個片化し、それらを組み合わせて一つのチップにする技術。高性能かつ低コストで製造できる。
  • 地熱増産システム
    Fervo Energy社の新しい掘削技術を使えば、どこでも地熱発電が可能になる。
  • エクサバイトスケール・コンピューター
    毎秒100京回の演算が可能。あらゆる分野の発展を加速させている。

セッション4:AIインフラストラクチャのトレンド(NVIDIA社、Oracle社、Index Ventures社、BainCapital社)

AIインフラストラクチャに関する、パネルディスカッション形式のセッションが行われた。

  • AIインフラの現状と課題
    AIインフラの様々な領域において、日々新しい技術が登場・発展する一方、ツールやサービスが乱立し混乱状態。LLMOps領域では、複数機能を統合し提供するトレンドが登場。
  • 今後のAIスタートアップには、特に「専門化」が重要になる
    既存の大手企業に対し競争力を構築するためには、ニッチで深い専門知識を必要とする領域でサービスを提供し、専門化していくことが重要。
  • 今後のAIの注目領域
    ヘルスケアが注目領域。AIによるヘルスケア特有の情報処理の強化によって、パーソナライズされた治療法の提供や新薬発見の加速化が進む。

展示会場の様子

AIやロボットなど、近未来感がある展示が多くありました。各ブースの様子をご紹介します。

注目のブース

  • Mirokai:リアルタイムに会話し表情を変えるロボット。
  • Wehead:自身のデジタルクローンを作成。Face to Faceで表情を変えつつ会話できる。
  • Holoconnects:遠くにいる人の等身大のホログラムを生成し、遅延なく会話できる。

 

新しいコンセプトの製品にも注目が集まっており、

  • Füm:電源レス・ニコチンフリーでミントやオレンジの匂いの空気を吸える。禁煙用。
  • Shrunk:リアルな自分のフィギュアを$60~で作れる。思い出を形に残せる。

 

U.S.ARMYやCIAの出展も見られた。日本の出展者も多く、東京大学の学生やHonda、日本テレビなど20社ほどが出展していた。

街全体の様子

オースティンのダウンタウンは、その全体がSXSW2024の会場になっていた。スポンサーが街中に観覧車を設置したり、派手な宣伝カーや馬がいたりと、お祭りのような状況。フランスの自動車部品メーカーValeoは、XR技術を用いたレースゲームを展開。車内のタブレットを使い、実際に走っている道路をコースにしたマリオカートのような体験を提供。

注目スタートアップ

今回、9つのカテゴリ別にピッチが行われました。各カテゴリの優勝企業を、以下でご紹介します。

1社目:Gan.ai(AIでパーソナライズされた動画を生成)

AIを活用して、顧客情報をもとにハイパーパーソナライズされた動画を、数秒で大量に作成できる。作り方は、パーソナライズしたい項目を設定するだけ。Gan.Aiの動画は通常の動画に比べ、最後まで見られる割合が5倍、コンバージョンは3倍になる。

2社目:Swif(AIを活用したエンドポイントマネージメント)

MacやWindows端末など、エンドポイントデバイスのマネージメントサービスを提供。各種設定や利用するアプリなど自社のポリシーを、一括で各端末に反映できる。GPT4との連携で、デバイス管理全体の状況や個々のデバイス状況をすぐに把握できる。

3社目:OpusClip(ワンクリックでバズりやすい動画を生成)

AIを活用し、通常の動画をSNS向けの縦型動画へと、ワンクリックで変換する。動画のハイライトをつなぎ合わせたり、適切なフレーミングをすることも可能。AI Co-pilotを通じ、動画の適切な内容や長さのアドバイスも提供している。

4社目: Applix(ARを活用した外観品質検査)

自動車、医療業界向けの自動外観品質検査ツールで、ARの活用により、効果的な製造欠陥の検出が可能。事前に作成した仮想デザインを、AR技術で検査対象の製品に重ね合わせることで、高い品質を確保しつつ品質検査のプロセスを約70%削減できる。

5社目:folio(学生にインターンシップの機会を提供)

学生に対し、有償で約2ヶ月間のインターンシップの機会を提供する。現在アメリカでは、多くの学生が就職インターンシップの機会を求めているものの、その機会を得られる学生は20%未満。各企業もメンター育成に多額の費用がかかるため提供できない。

6社目:Single Time Micro needles(マイクロニードルによるワクチン接種)

複数回のワクチン投与を可能にする、マイクロニードルパッチを提供。皮膚に貼って剥がすと、ワクチンが含まれた微細な針が、痛みなく皮膚に埋め込まれ、時間の経過とともに分解されてワクチンを接種できる。3年以内に、人間向けのワクチン接種への活用を目指す。

7社目:Lotus(自宅の環境をリング一つで制御)

自宅にあるさまざまな物体を、指一本で制御できるウェアラブルリングを提供。インターネットや専用アプリを必要としないことが特徴。 操作したい物体を指でさしてリングをクリックすると、赤外線通信を通し物体を制御できる。2024年秋に販売予定。

8社目:Cephable(キーボードやマウスを超えるユーザーインターフェース)

キーボードやマウスの代わりとなる、新しいユーザーインターフェースを提供。ユーザーは、表情や頭の動き、音声を使って、PCを操作できる。専用のデバイスは不要で、PCにアプリをインストールするだけで利用可能。WindowsとMacに対応している。

9社目:Paradigm Robotics(消防士の代わりとなる人命探索ロボット)

SXSWの開催地・オースティンのテキサス大学のスタートアップが開発。消防士に代わり、火災の建物内で人命探索できる、救助ロボットを提供。800mまでの無線制御が可能で、カメラと各種センサーの情報をもとに、迅速に救出する。650℃の環境でも15分間活動可能。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。
Nissho USAは、シリコンバレーで35年以上にわたり活動し、米国での最新のDX事例の紹介や、斬新なスタートアップの発掘並びに日本企業とのマッチングサービスを提供しています。紹介した事例を詳しく知りたい方や、スタートアップ企業との協業をご希望の方は、お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

この記事を書いた人

Yuki Takeuchi

2011年に日商エレクトロニクス(現 双日テックイノベーション)入社。大手通信キャリア、OTT事業者向けの営業、Citrix製品の事業推進を経験したあと、ZoomやAsanaなどのエンタープライズ向けSaaSビジネスの事業開発、推進を担当。 2023年よりNissho USA(現 STech I USA)に赴任。ITを通して、日本企業の競争力や生産性が上げられるようなソリューションの発掘を目指して日々活動中。 担当領域は、ITインフラ全般、SaaS、Future of Work、Retail Techなど。 サーフィンや登山など体を動かすことが好き。

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