8月第1週の週刊コンテンツは銀行・カード・マネーをとりあげます。
1. JP Morgan がMarqetaと提携し、COVID禍のバーチャルカード需要に対応
COVID-19は人々の決済に関する考え方を大きく変えました。オンラインショッピングやコンタクトレス決済など、今後ますます期待が高まる分野です。バーチャルカードもその1つです。COVID禍には、銀行が物理的なプラスティックカードから、即時発行可能なデジタルカードをリリースすることは理にかなっているように思います。今回JP Morganは、フィンテックスタートアップのMarqetaと提携し、バーチャルクレジットカードを発行することは発表しました。Marqetaは、決済やカード発行プラットフォーム、技術を提供するフィンテック界の注目企業です。DoorDash、インスタカートなど、既に多くの企業で活用されており、IPOも近いと噂されています。JP Morganのバーチャルクレジットカードは2021年初頭に利用可能になると見込まれています。バーチャルカードの今後の動向も見ものですが、MarqetaのIPOの行方にも注目したいと思います。
https://www.cnbc.com/2020/07/28/jpmorgan-partners-with-marqeta-to-launch-virtual-credit-cards.html
2. MicrosoftとMastercardがFintechエコノミー活性化のために提携
フィンテックのイノベーションハブとして有名なMastercard Labsは業界でも有名な研究開発ラボです。Mastercardが提供するアクセラレータプログラムであるStart Pathとも連携しながら、フィンテック技術の開発に力を注いでいます。Start Pathでは既に200以上のスタートアップを輩出しています。今回Microsoftと提携し、Azureクラウド技術を連携させることで、より柔軟かつスピーディにフィンテック技術を開発し、かつフィンテックパートナーをサポートすることを発表しました。業界ではFacebookやAmazonなど、ビッグテック企業の金融事業参入が目立ちますが、中でもMicrosoftはパートナー支援を徹底しており、自らが事業参入するわけではなく、あくまで金融業界をパートナーとして支えています。それが大手に選ばれる所以かもしれません。
3. GoogleがBBVA USAなど、新たに6社の金融機関とデジタルバンキングビジネスで提携
Google Payを介してあらゆる銀行サービスにアクセスできる日も近いかもしれません。AppleとGoldman Sachsとの連携とは少し異なり、Googleは幅広く金融機関のパートナー拡大に努めています。Googleとしては顧客接点のフロントエンドにGoogle Payを活用できることで、金融機関が持つ顧客パイプラインに早期にアクセスできることになります。一方の金融機関は、Google Payプラットフォームと自社システムの連携により、よりデジタルな顧客体験を提供することで若い世代にも及ぶ顧客層を獲得するのに役立ちます。BBVA USAは、同社口座情報へのアクセスをGoogle Payを介して提供することからスタートしますが、彼らが進めているオープンバンキングプラットフォーム構想にも役立つ今回の連携で、BBVAスーパーアプリ開発などにつながるかもしれません。
4. 米銀ビッグ4行のスタートアップ投資レースはCiti Bankに軍配
ユーザ企業がどの程度スタートアップに投資しているかは、各社のイノベーションへの姿勢を把握するうえで、非常に重要な指標です。ここ3ヶ月の状況をCrunchbase情報から拾ってみたところ、Citiが7社とトップで非常にアグレッシブな結果でした。次いで、JP Morganが5社、Bank of Americaが2社、Wells Fargoは1社と続きます。
最もアグレッシブであったCitiの直近の投資先はSilverfortというイスラエルのセキュリティスタートアップでした。ゼロトラストセキュリティコンセプトをうたい、クラウド、オンプレミスなどセキュリティの境界が無くなってしまうことで欠かせない認証技術を提供します。エージェントレス、プロキシレスなど、既存のインフラ環境に変更を加えることなくセキュリティ強化ができることがポイントの企業です。我々もイスラエルは注目エリアです。
まとめ
今週は少しビッグテック企業と金融企業のパートナーシップが目立っていたような気がしました。Amazonのように自社で金融事業に参入する手法が受け入れられるのか、GoogleやMicrosoftのようにパートナーシップに焦点をあてた参入する手法が良いのか見ものですが、COVID-19禍のチャレンジングな状況においてはやはりパートナーシップをいかにスピーディに進められるかが肝のように感じます。金融業界に限らず、大手のパートナーシップの行方には引き続き注目していきたいと思います。