イノベーティブ・スタートアップ 2021.09.06

北米スタートアップを紹介!Yコンビネーター 2021年夏デモ・デー

米国のアクセラレーター、Yコンビネーターのデモ・デーが8月24日から25日の2日間にかけて開催されました。Yコンビネーターは米国で最も人気のあるアクセラレーターの1つで、これまで決済インフラ機能をAPIで提供するStripeや、コーディングなしでクラウドサービス同士を連携させる自動化ツールZapierなど、数多くのスタートアップを育て送り出しています。

オンラインで開催された今回のデモ・デーでは世界中から374社が参加し、1チーム1スライド、持ち時間約1分で自社プロダクトを発表する形となりました。地域ごとの内訳は北米のスタートアップが218社、アジア58社、欧州52社、南米30社、アフリカ14社、オセアニア2社です。今回は北米のスタートアップの中から、日本でも受け入れられそうだと感じたスタートアップを18社紹介します。

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Genei(自動要約ツール)

Geneiに文章を読み込ませると自動で要約するという生産性向上ツールです。少し長すぎて読むのを躊躇う場合でもGeneiに読み込ませれば要点をさっとつかむことができます。ベーシックプランは月額$3.99から利用可能です。

Hypercontext(チームのOKRに合わせてミーティングを効率化)

HypercontextはチームのOKR(Objectives and Key Results:目標と主な成果)に合わせてミーティングの効率化をサポートするツールを提供します。主催者がセールスチームミーティングや1on1などミーティングの目的に合わせて事前に用意されているテンプレートから選ぶことができ、ミーティング内容の議事録取りまとめからネクストアクションなどの管理に活用することができます。

Tavus(パーソナライズビデオの自動生成ソリューション)

Tavusは顧客に合わせてパーソナライズしたビデオを自動生成できるツールを提供します。ベースとなる動画はユーザー自身がTavusのツールから作成したあと、顧客の名前や製品名などパーソナライズしたい部分をテキストで編集するだけで、その文言通りに話される動画が数秒でできあがります。顧客の名前や特別なキーワードを顧客毎に設定するのも簡単で、効果の高い動画を素早く作成することが可能です。

パーソナライズ動画編集イメージ(Tavus公式ウェブページより引用)
変更したい赤枠部分をテキスト入力するだけで、スピーカーが文言通りに話している動画を作成してくれる

Goodkind(B2C向けビデオメッセージ作成)

Goodkindはコンシューマー向けのビデオメッセージを作成するプラットフォームを提供します。ビデオメッセージを送ることで顧客のエンゲージメントを高め、購買意欲やリピート率の向上を目指します。クリック数やエンゲージメントスコアなどの分析機能も備えているほか、ShopifyやMarketoなど様々なツールとインテグレーション可能です。

Storylane(SaaS企業向けデモ作成ツール)

StorylaneはSaaS企業向けに製品説明のデモ環境を手軽に構築できるツールを提供します。Storylaneが提供するブラウザ拡張機能を活用して製品のフロントエンドを自動でコピーすることで、実際のUIをデモ環境に取り入れられるほか、アピールしたい機能説明なども盛り込むことができます。さらにユーザーがどの部分を閲覧したかなどの行動データの取得も可能です。必要な操作はドラック&ドロップだけで、コーディングの知識は一切必要ありません。

Cloudanix(マルチクラウド環境向け情報とセキュリティの一元管理)

リスク分散などを目的として複数のクラウドサービスを利用する企業が増えている中、Cloudanixは管理工数や障害時の対応などマルチクラウド活用のデメリットを解消するソリューションです。複数のクラウド上にある情報を集めて1つのダッシュボード上に表示するほか、セキュリティの監視や、事故が発生した際に迅速に対応するための修正ワークフローの構築も可能です。

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Argonaut(インフラ環境自動構築ツール)

Argonautはクラウド上に自動的に開発環境を構築するというものです。開発環境に必要なKubernetes、Terraform、CI/CDの構成などを自動で構築してくれるため、ユーザー自身が構築する手間を省き、すぐに開発に取り掛かることができます。

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Genuity(IT資産管理プラットフォーム)

Genuityは企業が導入しているPCやネットワーク機器などのIT資産、利用しているSaaS、契約などを一括して管理できるほか、社員からの問い合わせにも対応できるヘルプデスク機能も搭載しています。Genuityを導入する企業の情報システムチームは、社内ITに関する管理工数を削減できるかもしれません。

Apollo(リワードで株式が取得できるデビットカード)

ApolloはMastercardと提携してデビットカードを提供するスタートアップです。特徴はリワードにTeslaやAppleなどの株式を活用している点で、ユーザーはカードを利用する毎に株式を取得することができます。利用金額の0.25%分の株を得られるるほか、利用金額に関係なくキャンペーンが実施され$3から$1000の株を獲得できるチャンスがあります。

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Aqua(少額投資プラットフォーム)

Aquaは個人が少額(約110万円)からPE(プライベート・エクイティ)ファンドに投資できるプラットフォームを提供します。共同創業者のRohan Marwaha氏は米国に拠点を置く投資ファンドのブラックストーン出身、Dev Patel氏はBank of Americaのエンジニア出身というバックグラウンドを持っています。

Inspector Cloud(小売向け在庫管理)

Inspector Cloudは小売店向けにモバイルアプリとSaaSを活用して店内の在庫管理を効率化するソリューションを提供します。その仕組みはモバイルアプリから商品棚の写真を撮るだけでInspector Cloudのクラウドに送信され、画像認識技術から在庫の状況を可視化するというものです。今まで従業員がマニュアルで実施していた在庫確認作業や補充作業を効率化することで、在庫切れなどを防止し売上向上が期待されます。

Nash(B2Bデリバリーサービス)

NashはB2B向けのデリバリーサービスプラットフォームを提供します。例えば小売店がデリバリーサービスを新たに始める場合でも、Nashのプラットフォームを活用すればピックアップや配達時間を手軽に管理することができます。さらに、配達状況をリアルタイムで可視化できるほか、APIも提供しているため既存システムとのインテグレーションも可能です。

Byte Kitchen(デリバリーとテイクアウトに最適化されたキッチンを提供)

Byte Kitchenはデリバリーとテイクアウトに最適化されたキッチンを提供することで、レストランビジネスの成長を支えます。利用するレストランは未進出のエリアにおいて最小限の投資で料理を提供することができ、ビジネスを無理なく広げることが可能になります。

Zensors Inc(カメラを利用したリアルデータ分析)

Zensors Incはカメラに写っているリアルなデータを画像認識技術を活用して分析するツールを提供します。例えばレストランに設置したカメラを利用した場合、1日の累積客数、現在の客数、空席数などをデータ収集することが可能です。その際決まった内容だでなく、ユーザー自身でカスタマイズした質問を作成でき、それに基づいたデータを取得することもできます。

SnapCalorie(カロリー計算アプリ)

SnapCalorieは画像認識技術を活用したヘルスケアスタートアップです。食事の写真を撮るだけで、カロリー、脂肪、炭水化物、タンパク質量を判別するモバイルアプリを提供します。

Firstlgnite(サイエンス特化のマッチングプラットフォーム)

Firstlgniteはサイエンスに特化したマッチングプラットフォームを提供します。例えば企業が何か科学的な問題を抱えている場合にFirstlgniteを使えば、その問題を解決できそうな知見を持つ科学者や大学の研究者を見つけることができます。エキスパートの知見を求める企業にも、研究資金を求める研究者にもメリットがある仕組みです。

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Slip(コーディング特化の教育プラットフォーム)

Slipは開発エンジニア向けの教育コンテンツを簡単に作成し販売できるプラットフォームを提供します。教育を受けるユーザーが自由にコーティングできる環境を使えるほか、WebデザインツールのFigmaやショートビデオ作成ツールのLoomなどとのインテグレーションができるため、開発エンジニアが充実したコンテンツを効率よく作れる工夫がされています。

Greenwork(非デスクワーカー向け教育)

Greenworkは電気自動車や物流業界などの非デスクワーカー領域のトレーニングを学生向けに提供します。トレーニングコンテンツだけでなく、履歴書の書き方から企業へのコンタクトまでの応募プロセスを一括して提供します。

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NisshoUSA注目ポイント

私が注目したのはPEファンドに少額から投資ができるプラットフォームを提供するAquaです。Robinhoodの登場で多くの人がモバイルアプリから簡単に投資ができるようになった中、その次のトレンドは上場している企業だけではなく、上場前のスタートアップやPEファウンドなど、今まで個人が手軽に投資をすることができなかった領域です。

米国では株式投資型のクラウドファンディングで調達できる額が約1億円から5億円に引き上げられ、未上場へスタートアップの投資が盛り上がりつつありますが、PEファンドへの少額投資は新たな投資の形という点で面白いと感じました。

個人投資に様々な選択肢が増えていく中、その変化によって新たなビジネスが生まれるかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございました。
Nissho USAは、シリコンバレーで35年以上にわたり活動し、米国での最新のDX事例の紹介や、斬新なスタートアップの発掘並びに日本企業とのマッチングサービスを提供しています。紹介した事例を詳しく知りたい方や、スタートアップ企業との協業をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

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Shuichi Noto

2008年にユニアデックス入社。5年間の大手通信キャリア向けの営業を経験した後、日商エレクトロニクスへ入社。大手OTTの情報システム部門向けにVDIやWeb会議などの働き方改革を促進するソリューションの販売に従事。2019年よりNissho USAに赴任。お客様のビジネスを共創&サポートできるようなソリューションの発掘を目指し日々活動中。担当領域はITインフラ全般、ヘルスケア業界、地域創生など。趣味はゴルフとサッカー。

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