2022年11月8日から9日にかけて、米国カリフォルニア州サンノゼでZoomの年次カンファレンス「Zoomtopia2022」が開催されました。本イベントは2017年から続いており、今回は6回目にして3年ぶりにリアル会場での開催でした。
Day1はZoom CEOのエリック・ユアン氏によるキーノートで幕を開け、Zoom CPO(Chief Product Officer)のオディッド・ガル氏による新機能発表など盛りだくさんの内容でした。
本記事では今回発表されたZoom新機能の要点を紹介していきます。
Zoomの新たなコンセプト「Zoom One」
Zoom CPOのオディッド・ガル氏がプレゼン冒頭に発表したのが、Zoomの新しいコンセプト「Zoom One」です。Zoom OneではZoomプラットフォーム上でコミュニケーションが完結できるよう、従来のウェブ会議機能やチャット機能に加えてメール、カレンダー、通話機能などをZoomのプラットフォーム上で全て提供します。
ここからZoom Oneを実現する上でキーとなる新たな機能について解説していきます。
*今回発表された新機能の多くは2023年Q1〜Q2にリリースが予定されています。
Zoomプラットフォーム上でメール操作を実現する統合機能
Outlookなど多くの人が利用している代表的なメールツールをZoomのプラットフォーム上で利用できる統合機能です。メール閲覧や送信などの操作もZoomプラットフォーム上で行えます。
充実した機能を備えたカレンダー
新たにカレンダー機能がZoomプラットフォーム上に統合されるだけではなく、Calendlyのようにスケジュール調整を提案する側が都合の良いスロットをいくつか設定してURLを発行し、そのURLから参加者が都合の良い枠を選ぶという機能も実装されます。
また、カレンダー上で予定されたミーティングには、レコーディングデータなども紐づけられる予定です。そのため、ミーティングに参加できなかった場合でも、カレンダーから対象のミーティングを選択するとレコーディングデータにアクセスできるようになり、データを探す手間が省けて生産性向上が期待されます。
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より便利なチャット機能を実現するTeam chat
これまでZoomには、ミーティング中にチャットできる機能と、普段のコミュニケーションに使えるチャット機能の2種類がありました。しかしそれらは互いに連携していなかったため、Zoomミーティング中にやり取りしたチャットの内容は、レコーディングデータでしか確認できませんでした。
今回発表されたチャットの連携機能では、Zoom ミーティング中にやり取りしたチャットの内容も、普段のコミュニケーションで使うチャットに引き継がれるため、レコーディングデータにアクセスする必要なく簡単に確認できるようになります。
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リモート環境でもオフィスでのコミュニケーションを実現するSpots
リモートワークの浸透でオフィスでばったり顔を合わせて立ち話をするというような偶発的なコミュニケーションが減りつつある中、Spotsはオンラインでありながら立ち話をするような体験を実現します。メンバーはSpots上で行われている会話に自由に参加できるほか、チャットをするような感覚で会話を開始することも可能です。この機能により、リモートでもオフィスで行われるようなコミュニケーションの実現が期待されます。
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他ウェブ会議ツールと連携
ZoomだけではなくMicrosoft Teamsなど他のウェブ会議ツールを使う人も多い中、それらのツールと連携できる機能も発表されました。サポート予定のツールはMicrosft Teams、Google Meet、Webexで、これらのツールからZoomミーティングにアクセスできるようになります。
リアルタイム翻訳
言語の壁を取り除いて世界中の人々とのコミュニケーションを加速させるべく、リアルタイム翻訳機能が更にパワーアップします。既にサポートしている英語や日本語など12ヶ国語に加えて、新たにヒンディー語など16ヶ国語にも対応する予定です。
アバターを利用した新たなコミュニケーションへ
Zoom上で自分のアバターを作成し、そのアバターでミーティングに参加できるようになります。これまで顔出しを控えたい場合は音声のみで会話していたのが、今後はアバターを通して表情の変化を見てもらえるため、会話がよりスムーズになるでしょう。
Zoomミーティングのビデオクリップが簡単に作成できる機能Clips
Zoomのレコーディングデータを簡単に編集して共有できる機能です。これまでもレコーディングデータの編集機能はありましたが、あまり使い勝手が良いとは言えませんでした。これがより使い勝手の良い機能へと進化し、ミーティングの重要な部分のビデオクリップをサクッと作成して共有できるようになる予定です。
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AIを利用した営業機能Zoom IQ for Sales
オンライン上で営業活動を行うケースも増えた中で、その営業パーソンのトークを分析してアドバイスをする機能です。商談後に話す速さをもう少しゆっくりした方が良い、聞く割合を増やした方が良い等のアドバイスを提供します。
コールセンターにバーチャルエージェント機能を実装
コールセンターでチャット等でユーザー対応をする際に、ユーザーが求めている内容をAIが認識してすばやく返答するバーチャルエージェント機能が発表されました。裏で動いているキーとなるAIは、昨年Zoomが買収したカスタマーサポートツールSolvvyのテクノロジーを活用しています。
より便利な電話へと進化するZoom Phone
2019年にリリースされたZoom Phoneではネット環境が途切れても会話を続けられる機能や、電話した内容のサマリをTeam Chatへ共有する機能などが実装され、より便利になります。
NisshoUSA注目ポイント
これまでこのブログではZoomのビデオクリップを簡単に作成できるGrainやオフィスにいる時のような偶発的なコミュニケーションを実現するLoop Teamなど、Zoomに不足している機能を補ってリモートワークをスムーズにするスタートアップに注目してきましたが、今回発表された内容にはそうした機能がほぼ全て網羅されており、2019年に初めてZoomtopiaに参加して以来最もインパクトを感じたイベントでした。
カレンダーの調整ツール、レコーディングの編集など現在はそれぞれサブスクリプションで契約しているツールがZoomの新機能で利用できるようになれば、生産性の向上はもちろんコスト削減も期待できそうです。実際に利用してみなければわからない部分は多々ありますが、Zoomプラットフォーム上で全てのコミュニケーションが完結する未来は近いかもしれません。
また今回3年ぶりにリアル会場での開催ということもあり、個人的なテーマとして「ネットワーキング」を意識しました。会場中で色々と人に声をかけていると、昨年Zoomが買収したSolvvyのCEOであるMahesh Ram氏と知り合うことができました。バーチャルでの参加だとこのような出会いはなかなか難しく、改めてリアルの価値を認識したイベントとなりました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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