シリコンバレーテクノロジー 2016.02.11
TEXT:Team Nelco

あのテーマパークも。すべての産業を変えていく、IoTの利用例7選

こんにちは、Nissho Electronics USAです。先日インダストリー4.0についての記事で紹介したように、爆発的にIoT(Internet of Things)が普及し始めた今、多くの産業においてIoTの活用が生き残りのカギになってきています。

今回は既にIoTが活用され始めている7つの分野について、活用事例とともに紹介します。ぜひあなたの会社や業界で、IoTをどのように利用できるかを考えてみてください。

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分野1. テーマパーク

テクノロジーとは縁遠いと考えられているサービス業でも、より高いレベルのサービスの提供や、効率化によるコスト削減のために、IoTの導入が進んでいます。

例えばテーマパークのディズニーでは、MagicBandというRFID内蔵のリストバンド型ウェアラブルデバイスを開発しており、ウォルトディズニーワールドなどで既に導入されています。MagicBandの開発にあたり、ディズニーは10億ドルの投資を行い、開発の過程で10件以上の特許を申請したと発表しています。

デバイスにMagicBandをかざすだけでディズニーランドへの入場ができ、ディズニーリゾートホテルのルームキーにもなります。パーク内の複数の箇所にタッチポイントがあり、キャストが持つデバイスにもタッチすることができます。さらには、レストランやショップでの支払いも可能です。支払い時には、事前に登録したPINコードの入力が求められます。

MagicBandを使うことで、ゲストにより高いサービスや体験を提供することが可能になりますが、ディズニーには顧客満足度の向上以外にもメリットがあります。

テーマパーク内でのゲストの行動が分かれば、施設やサービスの改良に役立てられる貴重なデータになるからです。ゲストがいつ、どこにいて、アトラクションをどう利用したかや購入したものが分かれば、それに基づいて改善することができます。

これまでは勘や経験に頼る部分が多かったものでも、施策に対する効果を計測できるようになれば、データに基づいた合理的な判断が下せるようになるのです。このように、これまでは計測が技術的に難しくデータの活用やデータに基づいた意思決定という発想が乏しい業種でも、IoTによりどうデータを得るか、それをどう使うかを戦略的に考える必要がでてきます。

分野2. 小売店

店内にインターネットにつながったセンサーやカメラなどのデバイスを配置し、店員のスマートフォン、タブレットデバイス、デジタルサイネージ、POSやCRMなどの業務ツールと連携させることで、より高い顧客サービスの提供や、在庫の管理、マーケティングが可能になります。

まず、在庫管理は大きく効率化できる部分です。Intelは画像認識により、売り場の商品棚の品切れをチェックするソリューションの提供を行っています。これにより、売り切れを防ぎ、売り逃がしを防ぐことができるようになりますし、大型の店舗であっても商品棚の管理も容易になります。さらには、売り場の棚、店の倉庫、流通経路、工場がネットワークで接続され、自動的に発注するなどの自動化が進むと考えられます。

商品棚の例を挙げましたが、このような小売店でのIT利用のアイデア自体は全く新しいものではなく、10年以上も前や、スマートフォンが登場し始めた頃からありました。例えば、お客さんがどこにいるのか、どのような経路で売り場を回っているかを検知することが期待されています。現状では把握できていないお客さんの店舗内の行動を分析することで、売り場のレイアウトや陳列を最適化したり、店内のデジタルサイネージの表示を変更したり、お客さんのスマートフォンに情報を表示するなど、たくさんの可能性があります。

このため、RFIDやiBeaconなどの屋内位置情報技術が登場する度に、取り組みが行われてきましたが、コストなどの問題で十分に実現されていませんでした。近年のセンサーの高性能化&低価格化と、カメラの高性能化と、画像認識の精度の向上によって、小売店内におけるIT活用案の実現性が高くなっています。

昔聞いたことがあるアイデアが、気がつけば店舗で実現されていたという経験をすることも、今後増えてくるでしょう。

分野3. 公共交通機関

電車が故障なく運行され、駅のエスカレーターやエレベータが当たり前のように動くのは、運営会社が点検・メンテナンスを定期的に行っているからです。点検作業の多くが整備士によって人力で行われていますが、今後はこのような作業の多くが、IoTデバイスにとって代わられることが予想されます。

例えばロンドンの地下鉄では、IoTを積極的に取り入れた近代的な取り組みを行っています。地下鉄内エスカレータやエレベータ、監視カメラ、トンネルなどにセンサーを取り付け、そのデータをインターネットを通じて収集するシステムを構築しています。

常にデータを計測し続けることで、異常を検知しやすくなり、異常を検出すれば、壊れる前にメンテナンスを行うことができます。これにより管理効率を大きく高め、故障を減らすことが可能になりました。

このような事例は、街や工場など様々な場所で広がっていくと予想されます。膨大なセンサーで常にデータを計測し、人工知能によって解析することで、わずかな異変を捉えて「故障がじき発生する」などという情報を検知できるようになります。

常に計測することで人間による定期的な点検よりも早く、より細かい異変や兆候にも気づくことができるようになります。IoTはただの人間の代わりではなく、人間以上のことができるのです。

整備不良が原因となる事故が発生し、大きなニュースになることがありますが、今後IoTの普及によってより安全な移動が可能になることが期待されます。

分野4.自動車

実はすでに自動車は多くの部分が電子制御されており、「走るコンピュータ」とも言われています。当然、IoTの活用が見込まれます。

まず普及するのが、走行データの解析とそれに伴うサービスの提供です。例えば、日商エレクトロニクスでは「くるま-i」と呼ばれる車両運行管理テレマティクスクラウドサービスを提供しています。

くるま-iでは、車両やドライバーごとに、日時・位置・急ブレーキ・急発進・速度超過などの情報が秒単位で収集されます。さらに、連続運転時間、総運転時間、総移動距離、アイドリング時間といった運転関連情報もサーバーに自動で蓄積されます。

これらのビッグデータをお客様の状況に合わせて地域・部署・期間・時間帯といったさまざまな切り口で分析し、その結果をメール添付でお知らせすることで、企業の運転におけるリスク傾向を「見える化」するサービスを提供しています。

また、シリコンバレーのスタートアップのAUTOMATICのように、デバイスを車のOBD-IIという端子に接続することで、車の速度やガソリンの消費量などの運行状況をクラウドで管理し、走行情報をWebのマップ上で確認したり、他のサービスと組み合わせて利用できる一般消費者向けのサービスも登場しています。

さらには、Tesla社の電気自動車のModel Sのようなコネクティッドカーも普及していきます。Model Sでは、ファームウェアのアップロードをインターネットを通して行うことで、新たな機能を追加したり、走行の特徴を変更するなどを行うことができます。

また、Googleや各自動車メーカーも、自動運転カーの開発に積極的に取り組んでおり、自動運転カーの実用化も近いとされています。このように自動車産業はITテクノロジーにより大きく変化することが予想されています。

分野5. 農業

これまで経験や勘に頼っていた農業の分野でも、IoTデバイスの利用への取り組みが進んできます。現状ではデジタルで管理されている栽培データは少ないのですが、インターネットにつながったセンサーやカメラによって、気温、土の温度、湿り気、水分量、風速、湿度、日射量などのデータを収集することがで、データが爆発的に増加します。

このデータをダッシュボード上にグラフを使って分かりやすく表示し、農場の状態を確認したり、人間が栽培方法の意思決定を行うことが期待されます。さらには、それぞれのデータと味や品質などの関係性を人工知能が理解し、意思決定そのものを人工知能が行うことが期待されます。

これにより、農作物の品質が向上し、収穫量も増えます。栽培方法がデータ化されることで、最適な栽培方法を生産者同士で共有したり、学びやすくなるため、生産者を育成しやすくなります。また、農業で大量に必要となる、水や肥料の利用を最適化することで利用量を削減できるため、環境にも優しいというメリットがあります。

また、植物工場でも同様に、IoTを活用して効率的な栽培を行う取り組みが進んでいます。植物工場は長い間期待されながらも未だ本格展開に至っていませんが、IoTの普及による成長が期待される分野です。

植物工場というと、郊外や地方の大型の施設を思い浮かべるかもしれませんが、都市部でも狭い土地でも効率よく栽培するために、縦に積み重ねる垂直農法というスタイルの植物工場が注目されています。都市部での植物工場を手がけるニューヨークのスタートアップ「AeroFarms」では約25億円を調達しており、もっと植物工場が身近になるかもしれません。

分野6. スマートグリッド

「スマートメーター」と呼ばれるインターネットにつながった電力計により、電力会社はリアルタイムに利用状況を把握できます。現在のように、作業員が1人1人巡回して検針を行う必要はありません。

スマートフォンから、自分の家の電気使用量を確認できるようにもなるでしょう。ただ、これらはスマートメーターがもたらすものの、ほんの一部 です。

家庭や事業所の電力機器と、変電所などの送電設備や発電施設のすべてがインターネットに繋がり、リアルタイムに状況を共有することで、電力網自体がデータ分析や人工知能によって自動に最適化し、より効率良く、安定的に電力が供給されるようになります。

日本では送電網がしっかりしているため停電はほとんど起こりませんし、台風などで発生した場合でもすぐに復旧する場合が多く、電力の安定性はすでに十分に担保されていると思われがちです。しかし、意外にも2000年以降にアメリカやイタリアなどの先進国でも大規模停電が起こっています。特に、2003年にアメリカとカナダの5000万人に影響する大規模停電が起こり、この間の金融赤字は60億ドル(約7000億円)にのぼります。

また、送電網を取り巻く状況も変わってきています。これまで発電所から、家庭や事務所、工場に主に一方向に流れていただけですが、太陽光発電、風力発電、家庭用の大型蓄電池が普及することで、双方向に流れることになり、一気に複雑になるのです。

このような背景から、より電力を安定的に、効率的に供給するために、注目されているのがスマートグリッドです。スマートグリッドを使えば送電経路を最適化することで、電力のロスを最小限する経路を選択したり、電力の乱れや停電から素早く復旧することが可能になります。送電網のオペレーション、メンテナンスの管理コストが下がるため、電気料金の低下につながるというメリットがあります。今話題の電力の小売りの自由化とも密接に関わっています。

分野7. スマート工場

「スマート工場」が広がっていきます。すでに工場内では多くの機械が導入されていますが、全てのデバイスがインターネットに接続しクラウド上にデータが送信され、データ解析や人工知能が活用されることによって、最適な生産管理や品質管理を行えるようになります。

ドイツ政府が主導するインダストリー4.0が話題となっています。将来的には工場同士はもちろん、工場と流通、小売店などの製品が接触するものの全てが、国や企業を超えてネットワークで繋がることで最適化が進みます。最適化によってコストが下がり、より安く製品を製造できるようになります。

また、最適化によって、現在の主流となっている大量生産ではなく、少量生産でもそれに近い低いコストで製品を作れるようになり、個人の好みに合わせた多品目少量生産が可能になると言われています。

例えば、2015年4月に開催された「ハノーバーメッセ2015」では、ドイツのシーメンスが、注文に合わせて様々な香水をカスタマイズして生産するシステムを展示して話題となりました。もちろん、製品によってどのくらい多品目少量生産に対応できるかは変わってきますが、スマート工場はショッピングの楽しみ方さえも変えてくれます。

Nissho Electronics USAの取り組み

これまでテクノロジーとは無縁であった業種でさえも、IoTや人工知能の活用を考える必要が出てきています。今後、劇的な環境変化が多くの産業分野で起こると考えられており、どのように最新のテクノロジーを活用するか、既存の仕組みをいかに時代に合わせて切り替えていくかが、多くの企業にとって重要な課題となってくるでしょう。

Nissho Electronics USAは上記のようなトレンドを把握の上、来るべきデジタルビジネス時代に備え、様々な観点からシリコンバレーで調査を行い、日商エレクトロニクスと連携し、お客様に対し最適な提案をしてまいります。お問い合わせフォームより、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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