こんにちは、Nissho Electronics USA 能任です。
10月2日から4日にかけて、米国カリフォルニア州サンフランシスコでTechCrunch Disrupt San Francisoco 2019が開催されました。同イベントは2011年から続いているTechCrunch主催の年次カンファレンスで、スタートアップとテクノロジーの祭典となります。
同カンファレンスの目玉であるスタートアップバトルフィールドは、世界中が注目していると言っても過言ではない、スタートアップのピッチコンテストとなります。今回はそのピッチコンテストで激戦を制したRenderについてご紹介したいと思います。
Render誕生の背景
2018年に設立したRenderはサンフランシスコに拠点を持つマネージドクラウドサービスを提供するスタートアップです。背景には、スタートアップがAWSやAzureなどのクラウド上にサービス開発のための基盤を構築したり運用したりするために、DevOpsエンジニアのエキスパートやコンサルタントを採用する必要があるという問題があり、CEO兼ファウンダーのAnurag Goelはをこの状況解決を目的としてRenderを設立しました。
開発基盤の構築、パッチ対応など日々の運用、セキュリティー、アクセス管理などクラウドが普及した現在でも、安定・安全な開発基盤をクラウド上で運用していくためには多くのDevOpsエンジニアのエキスパートが必要です。驚くことに米国のDevOpsエンジニアの平均年収$104K(約1千100万円)、年間DevOpsエンジニアに支払われているお金は$68B(約7兆5千億円)に上ります。DevOpsエンジニアを雇うためには潤沢な資金が必要となり、スタートアップ企業には大きな課題の1つとなっています。
そんな状況のなか、AWSやAzureとは異なったアプローチでマネージドクラウドサービスを提供するのがRenderです。ここからはその特徴を紹介していきます。
DevOps環境を整えるための複雑なエコシステムを説明したスライド
AWSのようにパワフル、Herokuのように管理が簡単
Renderの大きな特徴は、安定したクラウド基盤と、アプリを安定して動かすための監視やスケールなどの機能を両立して提供していること。これはいわばAWSとHeroku(2010年にセールスフォースが買収)の「良いとこ取り」だと言えるでしょう。
AWSとHerokuの良い所をRenderで実現するということを説明したスライド
誰でも構築可能なシンプルさを実現
サイト名、環境(Docker、Ruby、Rythoe3など)、Build Command、などの項目を入力することで基本セットアップが完了します。
実際にRenderでデプロイする際のUI画面
安心のネットワーク&データバックアップ
セキュアなネットワークと自動バックアップの機能も提供しており、ユーザ側は安心してRenderサービスを利用することができます。
プライベートネットワークと自動バックアップの説明スライド
サービスの成長率は毎月50%
Renderサービスは毎月50%の成長、HTTP Requestが1週間で100万という驚きの数字
成長率とHTTP Requestの説明スライド
ターゲットはスタートアップ、個人の開発エンジニア
使える機能は限定されるものの、1つのサイトであれば無料で利用することができます。また有料プランもスモールスタートで月$7から提供しており、個人のエンジニアでも活用できる価格帯に設定されています。
GPU対応は今後に期待
ピッチコンテストファイナルの審査員であるMamoon Hamid氏(Kleiner Perkins)から挙がった「Renderの弱い点はどこか?」という鋭い質問に対して、Anurag Goel氏(Render)は「GPUを必要とするワークロードにはまだ対応できない点」だと回答。GPU対応は今後に期待ですが、すべてが完璧でなくてもピッチに登壇し、評価を受けることがきるいい例です。
ピッチファイナルで審査員のQAに答えるRender CEO兼ファウンダーのAnurag Goel(右から2番目)
まとめ
今回初めて本イベントに参加して最も印象に残ったことはスタートアップの熱意とアイディアを肌で感じたことでした。今回紹介したRenderだけではなく、スタートアップバトルフィールドで輝いていた20社、ブースで参加者に自社の製品をアピールしているスタートアップなど、様々なスタートアップが世の中の課題を見つけて解決しようとチャレンジしている姿がとても印象的でした。
本イベントではスタートアップだけではなく、世界中から著名人もゲストとして招かれ講演していました。次回はその中から米国ヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエーツを創業したRay Dalio氏の講演について取り上げたいと思います。
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