今回、株式会社オリエントコーポレーション(以下、オリコ)でシリコンバレーに駐在をされている早出様をお招きし、米国決済トレンドについて紹介をさせていただきました。本ウェビナーでは、その中でも特に「エンベデッドファイナンス(組み込み型金融)」に焦点をあてております。
フィンテックへの米国VC投資は、過去最高の7.2兆円
「すべての企業がフィンテック企業になる。」これは、トップティアVCのアンドリーセン・ホロウィッツのジェネラル・パートナーであるアンジェラ・ストレンジ氏の言葉です。「この言葉の背景には、従来の伝統的な銀行への不信感がリーマンショック後に広がっていることがある。」と本ウェビナーの講演者である米国駐在員の日商エレクトロニクスUSA・榎本は解説します。
従来の伝統的な銀行は、毎年1000億円以上のIT投資をしていますが、その75%以上は既存商品の維持に使われています。一方、新商品サービス開発を立ち上げるのに苦労している状況があります。こうした背景から、スタートアップによる新たなサービス展開が加速し、投資が積極的に行われています。
エンベデッドファイナンスの市場規模は、2020年において2.6兆円と言われていますが、2025年には26兆円規模の市場になるという調査があります。5年間で10倍の市場規模に成長していく予測です。なかでも“決済”分野はその6割を占めています。
エンベデッドファイナンスとは?
「簡単に言いますと、”非金融企業が既存サービスに金融商品を組込んで提供すること”です。Apple社が提供するApple Cardやテスラ社が提供する自動車保険などがイメージしやすいかと思います。その仕組みは、まずイネイブラーがライセンスホルダー(金融事業者)からAPIで金融機能の提供を受けます。イネイブラーはそこに付加価値をつけ、ブランドへ金融機能をサービス提供します。イネイブラーが提供する付加価値には、決済、貸付、保険などがあります。これを活用することでブランドは、一からシステム開発を行わずに金融機能を顧客へ提供することができます。イネイブラーのサービスが魅力的なものであれば、ブランドは自社の魅力をさらに高めることができます。」とゲスト講演者であるオリコ社の早出様は説明しています。
どんなイネーブラーやブランドがいるのか?注目のスタートアップを早出様からご紹介をいただきました。
1. Marqeta(マルケタ)
VisaやMastercardなどの発行の仕組みをオープンAPIで提供しています。これらの国際ブランドカードには、クレジット、デビット、プリペイドの3種類のパターンがあります。また、発行形態にもバーチャルカードと本物のカードがあります。Marqetaは、これらすべてのカード発行を支援することができます。また、最近話題のBNPL(Buy Now Pay Later)の大手3社(Affirm、Klarna、Afterpay)にもサービス提供をしています。
2. CloudTrucks(クラウドトラックス)
トラックドライバーの仕事のマッチング、決済の管理、配送ルートの提案などの機能を提供しています。同社の収入源には、ドライバーがアプリを経由して行った仕事の売上13%の手数料があります。さらに特筆するべきは、同社はブランドであるにも関わらず、カード発行による金利手数料の収益をイネイブラーおよびライセンスホルダーとシェアしてる点です。
3. Lessen(レッセン)
不動産オーナーと不動産関連サービス事業者(例;配管工、清掃業者、リフォーム業者)をマッチングするプラットフォームを提供しています。同社は、サービス事業者への支払いにおいて決済代行機能を有しており、決済代行による手数料もサービスの収益源としています。
参加者からいただいたご質問
本ウェビナーでは、Q&Aセッションを行いました。ご参加者からの質問について一部ご紹介をさせていただきます。
BNPLに興味がありますが、もう少し詳しく教えてください。
BNPLは、ユーザーが商品を購入後、支払いを複数回に分割することができるサービスです。なお、この時の手数料は店側が負担する場合のが一般的です。ユーザーのメリットは、クレジットカードを持つことが難しいような若年層が、分割支払いをできるようになることです。店側のメリットは、コロナ禍で落ち込む売上を少しでも伸ばすことができることや、“かご落ち防止”が挙げられています。
クレジットカードを持っている人がBNPLを使えることのメリットは?
審査が簡単で素早いことや、1クリック決済があらゆるサイトでできるなどさまざまなメリットがあります。
クレジットカード会社にとってBNPLの事業者はどう見えているのか?
敵でもありパートナーでもあります。自社のネットワークを通れば、クレジットカード会社としては収益を得ることができます。そうしたBNPLの事業者とクレジットカード会社が、提携するビジネスモデルもあります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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