こんにちは。Nissho Electronics USA細井です。私はスポーツ観戦が趣味の一つなのですが、TVやネット中継時には様々にデータを活用し視聴者の興味を惹く工夫をしています。今回はスポーツ関連で「こんなところにもビッグーデータとAIが活躍している」というネタをご紹介します。
マネーボール
ビッグデータの有効性、ビジネスへの活用、思い込みからの脱却の成功事例を一躍有名にさせたの本といえば、「マネー・ボール」(マイケル・ルイス著)ではないでしょうか?
カリフォルニア州のオークランドを本拠地とするオークランド・アスレチックスが、従来のスカウトによる思い込みで選手をドラフトにかけたり、チーム編成を行ったりしつつも結果がでず、予算の大きいメジャー球団の後塵を舐める結果が続いていました。しかし、時のGMであるビリー・ビーン氏が「セイバーメトリクス」という野球における統計学的手法を用いて、出塁率、長打率、選球眼、進塁打、三振数等をデータで客観的に分析し、チーム編成を行いました。
派手さには欠けるもののチームの勝利に貢献できるスキルやデータの裏付けを持った選手を重宝し、チームをプレーオフ進出に導いた実話を元にしたサクセスストーリーとなっています。人気俳優ブラット・ピット主演で映画化もされたのでご覧になった方も多いでしょう。今でこそ、当たり前になったデータ分析に基づいたスポーツですが、当時は斬新なもので、アメリカ国内でも多くの論争を呼びました。
また、記憶に新しいサッカーのロシアで開催されたワールドカップでも、選手の状態把握の為にビッグデータが活用されていました。
【参考】SAP がドイツサッカーチームのロシアワールドカップでの活躍をテクノロジーでサポート
NBAで進む「勝利」以外の活用方法:会場スケジューリング
米国には4大プロスポーツと呼ばれるMLB、NFL(アメリカンフットボール)、NHL(アイスホッケー)そしてNBA(バスケットボール)があります。NBAでも上述の「マネーボール」の例のとおり、相手に勝つために様々なデータをビッグデータとして分析し、戦術に落とし込む事を実施していますが、さらにNBAでは興業を運営する組織として、各チームの試合会場のスケジューリングにビッグデータを活用しています。
NBAでは、30チームが6か月間のシーズンで勝敗を競いますが、総ゲーム数は1,230ゲームにもなるそうです。その上、試合に使用する各チームの会場はこのNBAのゲームだけではなく、他のスポーツ競技、コンサートやイベントなど色々な用途で使用されます。それぞれ予定は毎年異なるなかで、試合会場を確保するのは実に大変な作業です。また当然のように気象状況は日々刻刻と変化し、それに合わせ交通手段も変わりますので、NBA側はタイムリーな情報アップデートと変更手配が必要になります。、もはやとても人のチカラだけでは会場のスケジューリングが難しくなってきている、というのが現状で。
さらにビッグデータを活用した綿密な試合会場のスケジューリングは、対戦するチーム同士が公平な環境で試合を行う上でも重要になります。試合のマッチメーク、スケジューリング、試合会場の決定や手配などにおいて、フェアな条件下でチームが最大限なパフォーマンスを、観客喜ばせ、結果的に長期に渡り興行収益を上げることに繋がります。
全米は広大で、チームの移動距離も長くなり、またハワイなど隔地を除いても時差は東・西海岸で最大3時間あることから、移動による疲労や気候の違い等で試合する両チームの条件を同じくすることは今までも特に難しかったことでしょう。しかし、データの力を通じてスポーツビジネスに新たな「公平性」がもたらされるようになっています。巨大なマネーが動くプロスポーツ、何より観客が最も楽しめるように、選手に最高のパフォーマンスを発揮してもらうべく、データ解析もとにしたスケジューリングがNBAで進んでいます。
活用の場を広げるビッグデータとAI
スポーツの醍醐味は勝敗がつく事だとは思いますが、その上で「お互いフェアーな環境下で」というのが前提条件にあると思います。勝敗を左右する為にデータに着目して活用し、またベストなパフォーマンスを出すため、フェアーな環境を整える為にもデータが活用され、プレーヤーの経験、私達観客の経験を豊かにするためにデータが活用されてきています。ゆくゆくは、取得されたデータがゲームにも活用されてくるでしょう。データを活用してリアルな経験を豊かにする・・・データとリアルライフの共存・共栄には益々期待してしまいます。
この様に、世の中の様々なビッグデータを活用することで、新たに気付きを得られるようになり、各業界や分野でビジネスチャンスに広がりが見えるようになっています活用されるビッグデータには、従来関連性を見いだせていなかったデータ、例えば、気象データ、交通情報、イベント情報、風邪の流行、SNS、年齢、性別、位置データなどなど様々なものが該当します。
それに伴い、データの種類、構造化されたデータ、非構造化のデータの違いに始まり、データ量が膨大なものなど、そもそも従来は異なる目的に使用する為、相関関係をとることを意識していないものの組み合わせで新しい価値が生み出されようとしています。データ量を多くすれば、それだけ処理能力も必要となりコストもかかります。これらはを可能にしているのは、クラウドコンピューティングによる分析能力の向上がもたらす効果で、膨大な量の基本データからの分析になります。
しかし、上述の例で示したようなスケジューリングは、多量なデータの処理というよりは、時には相反するような多数の変数からなる複雑なデータを元に迅速でコスト効果のなる解を導き出すシステムであるところに面白みと注目をしています。企業における判断の助けとなるデータは、大量なものではなく、散在しているデータである事も少なくありません。
上手なデータの格納の仕方、相関関係のとりかた、また得意な分野での分析エンジンなどイメージを具現化できるようなテクノロジー、アプリケーションとの連携などにおいては、エンジニアリングスキルのある、コンサルティング、ビジネスデザイナーの役割が重要さを増してきています。
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