こんにちは。Nissho Electronics USA細井です。
今年も米国のコンピュター業界は1月9日~12日(メディアの方々向けには1月6日~12日)に米国ラスベガスで開催されたCES(Consumer Electronics Show)で幕を開けました。CES2018は、その名の通り“消費者家電見本市“であるのですが、自動運転・AI・IoT・Drone・ロボティクスなどのキーワードにあるテクノロジーの進化と普及もあって、ここ数年でICT業界のプレイヤー達も積極的に出展しています。そのため、ICT業界が今後の消費者市場動向を知る上でもCESの位置づけはその重要度を増し、視察者も増加しています。
今年は自動車メーカー・バイクメーカーなどが大きなブースで出展し、ここは「モーターショーですか?」と見間違えてしまうかのような会場でした。自動者・家電・ロボットなどの視点からのレポートはご専門の方々にお任せするとして、私からは99%消費者家電業界素人&ICT目線で視察し直観的に感じた印象をまとめます。
今回ご紹介するのは以下の3つです。
- ライフスタイル・チェンジ
- スタートアップエリアでのフランスブースの積極的出展
- 電力の確保は引き続きの課題
1. ライフスタイル・チェンジを実現するロボット
まずは王道の消費者家電分野とICTから。今回私が注目したのは、洗濯した衣類整理にかかる時間短縮に取り組む①Foldimate社と②Seven Dreamers社/ Landroidの2社でした。どちらも乾燥した後の洗濯物を畳む作業を自動化するロボットで、2018年中の市場投入を目指しているとの事です。
①のFoldimate社は、イノベーションアワードショーケースにも展示されていましたが、ブースでは実機によるデモを行っていました。乾燥後の洗濯物を1枚1枚手動で機械に投入する必要がありますが、畳むスピードの速さと、市場提供想定価格を約$900USドル程度という値段設定で、家庭への普及を容易にしたいというマーケット戦略をとろうとしています。小気味よく動作する様子は、コピー機を前にした作業に似て、乾燥機の横に置いてある風景が根に浮かびます。
一方、Seven Dreams社は、冷蔵庫の様な大型な製品です。最下段の引き出し上のスペースに洗濯物をまとめて籠に入れると、なんと画像認識技術、AI、ロボティクス、IoT関連の最新技術を駆使し、自動的に1枚1枚形状認識して、畳むだけでなく、予め設定した種別毎(シャツ・ズボンなどの形状や、大人用・子供用といった使用者別)に仕分けして棚に格納する事ができます。生活上のイメージとしては、朝、乾燥機後の洗濯物を投入しタイマー設定すると、帰宅時には仕分け分類されて棚に格納されているという具合です。価格帯ですが、当初は富裕層がターゲットになりそうです。
どちらの製品も特徴があり優劣をつける事はできませんが、私は両製品が共に自動で畳む作業の自動化だけでなく、あくまで“洗濯物を畳む“という日々の時間からの解放を目的としているという事に注目しています。1日が24時間しかないのは我々生活において平等であり、時間の有効活用は人々の生活を豊かにする事(さらにはストレス解消)に繋がります。この2つのロボットも日常生活における家事の時間短縮に貢献し、私たちのライフスタイルを変えていく事が大いに期待できるので、一般家庭に普及すると考えています。
消費者向けの家庭内のロボットでは、iRobot社のルンバのようなお掃除ロボットが普及していますが、その次となる今回は洗濯物の時間に着眼したものでした。今後もライフスタイルを変えるロボット技術動向に注目してみたいです。
2. 勢いに乗るLa French Tech、スタートアップエリアで際立つフランスブース
スタートアップエリアを訪れて一瞬、「ここはパリで開催されている見本市に来ているのだっけ?」と勘違いしてしまいそうなくらい、ここではフランスのブースが大勢を占めていました。”French Tech”というエリアだけではなく、フランス国内で区分けしたエリア(パリやその他の都市)もまた別にあり、各地域で積極的に投資している、最新技術を生みだすスタートアップが多数出展していました。フランス政府によるスタートアップ企業活動支援のためのエコシステム「La French Tech」の2億ユーロとも言われている巨額のシードマネー投入の結果が表れていて、国としての勢いを感じます。
もちろん、依然として中国、特に深圳(SHENZHEN)の文字が至るところにありましたが、各ブース似たような製品が多い印象がありました。それに引き換えフランスブースは、裸眼で見れる卓上AR表示装置(Hololamp社)や、ワインが有名な国らしく、各家庭のワインセラーにIoT技術と画像認識技術を組み合わせ、携帯アプリから指定したカテゴリーのワインの場所が分かったり、ストックの不足を知らせたりするアプリケーション(Caveasy社)などユニークさに溢れた出展内容で面白みがありました。私個人としては、フランスのスタートアップ企業とビジネスをした経験がないので、商習慣としての日本での展開などビジネス立ち上げの容易さは理解できていないのですが、今後のスタートアップ企業調査において要注目のエリアである事は間違いなさそうです。
3. 電力を持ち歩く!電力確保は引き続きの課題
当たり前ですが、CESにて出展されている製品の殆どは電力を使って動きます。大きなものは電気自動車から始まり、ライフログを集める腕時計タイプのセンサー、音楽再生装置、分析するアプリケーションが入るスマートフォン自体も電力が必要です。その電力をどのように共有するのか?またどのように生活に負荷無く持ち運べるか?更に、今後のIoT普及に伴い、各エッジデバイス、センサーへの給電はどのように行うのか?このような課題への解決策は未だに不十分で、これまでは非接触充電装置や、長時間型充電器程度だったと思います。
CES会場でも携帯が充電できるPower Stationに来場者や出展者の人々が集まって人だかりができていましたが、街の充電スポットが人の流れを変え、それがお金の流れを変える事に繋がってくることが今後考えられます。サービス化も含めた社会インフラとしての電力提供が必須になる世界がすぐそこまできているのです。
現状、電力枯渇の不安解消手段においてはポータブルバッテリーを持ち歩く人が多くいますが、それを持ち歩くのが不便だと感じる人もいます。その解決策という視点から、今回ベルト型バッテリーでブース出展していたBattery Belt社に目をつけました。充電器を持ち歩くという行為自体には変わりませんが、一つ視点を変えて「充電器をオシャレに、そしてスマートに持ち歩く」というところに着眼している面白みがあります。これからはUXデザインの時代だと先日の『現地レポート:UX Next 2017』記事でも触れましたが、案外こういったベタな解決策がミレニウム世代の間でしばらく流行るかもしれません。
CES 2018の視察を終えて:AIとロボットと人々が共存する世界
消費者家電市場に、AIやロボティクスが次々と導入され私たちの生活の身近な存在になってきました。AIが普及するにつれ、「AIが既存の職業を奪う」「AIの採用で人員●●人削減予定」といった若干不安になる見出しを目にするようになり、AIは人類の脅威となるといったコメントも散見されますが、このCESを見学して思った印象は、それらのネガティブな意見はまったく意味の無いものだと気づきました。
古くは産業革命時に蒸気機関が発明され、馬車を運転する御者の職業が車のドライバーに代わり、電話の交換者がPBXに代わったように、我々の生活はAIとロボットと共存する道を模索し、生活を豊かにしてゆく事を目指してゆくのが自然な流れでしょう。その人とAIとロボットが共存する世界を挑戦的なコンセプトとして発表したのがTOYOTAのe-Palettoだったのだと思います。現在の生活にAIが少し支援する、例えばVOICE to TEXTや、コンシェルジュというものではなく、世の中がAI前提の街になる事を意識した未来の街作りがコンセプトとしてあり、車に求めるニーズも嗜好も異なった世界を表現していて面白みがありました。AI前提の世界観から物事を考えますと、また違った発想が生まれてきそうです。
Nissho Electronics USAは上記のようなトレンドを把握の上、来るべきデジタルビジネス時代に備え、様々な観点からシリコンバレーで調査を行い、日商エレクトロニクスと連携し、お客様に対し最適な提案をしてまいります。
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